巨人をCSで倒せ! DeNA「ラミレス監督」がどうしても“下克上”せねばならない理由

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 巨人の5年ぶり37度目の優勝が決まった今年のセントラル・リーグ。レギュラーシーズンの順位もほぼ確定し、興味は日本シリーズへの出場権をかけたクライマックスシリーズ(CS)に移っている。

 混戦模様だった今季のセ・リーグでは、絶対的な強さを持つチームは見当たらず、 CSではリーグチャンピオン以外のチームが日本シリーズ進出を果たす、いわゆる「下克上」の可能性もありそうだ。特に注目したいのが、ラミレス政権4年目で過去最高の2位に躍進したDeNAだ。

 DeNAには、ラミレス監督2年目の2017年にシーズン3位からCSで阪神、広島を破って日本シリーズ進出を果たした実績がある。最終決戦では福岡ソフトバンクに2勝4敗で敗れたが、この年のDeNAの躍進には、ポストシーズンを重視した指揮官の差配があった。

 長年、ベイスターズの取材を続けるスポーツライターが当時を振り返る。

「シーズン序盤から広島が独走態勢を築いたこの年、ラミレス監督はオールスター前の時期には、すでに『3位以内に入ってCSで勝負』の意向を公言していました。先発投手のローテーションなども、首位チーム相手にエース級をぶつけるようなかつてのリーグ戦での戦い方ではなく、2位、3位を争うチームとの対戦をより重視するなど、非常に割り切った戦い方をしていました」

 今季は4月に10連敗を喫するなど、厳しいスタートとなったが、シーズンが進むごとに「勝率5割」から「3位以内」とその都度、目標を明確にしてきた。シーズン終盤には、優勝争いに加わるまで浮上したが、9月21日に首位・巨人との直接対決に連敗して目前で優勝を決められた試合後には、「プランA(優勝)は終わってしまった。これからはプランB(2位)に切り替えるしかない。その目標に向かって全力を尽くす」と即決し、目標を達成した。

 投手の8番起用や筒香の2番起用など、賛否の多い采配も、前述のスポーツライターの評価は高い。

「今季のDeNAはチーム防御率、チーム打率ともにリーグ5位で、シーズンの得失点差がマイナスになっています。この成績で2位に入ったのは、監督の采配が大きいと言えるでしょう。奇抜に見える選手起用も、徹底したデータ重視に基づいたものです。監督は囲み取材などで『明日は○○が活躍しそう』と予言めいた発言をすることが多いのですが、それもデータに基づいたもので、今季は見事に的中、というケースが多く見られました。かと思えば、シーズンの最終盤には、2番で結果を残していた筒香嘉智を4番に戻してチームの士気を高める試みをするなど、臨機応変な姿勢も強みになっていると思います」

 今季は桑原将志や倉本寿彦など、レギュラークラスの選手が不振でも、楠本泰史や巨人から移籍した中井大介など、それぞれ調子に合わせてサブの選手を効果的に起用した。筒香の代わりに4番を打つことが多かった佐野恵太は、左投手を苦手としていたが、敢えて打席に立たせることで克服させるという采配もあった。

 周囲が驚くような大胆な采配は、成功すれば勢いにつながり、特に短期決戦では大きな力になる。17年の広島とのCSファイナルでは、今永昇太の中継ぎ起用や「一人一殺」の小刻みな投手起用が奏功し、シーズンで14.5ゲーム差をつけられた相手に下克上を果たした。

勝たなければいけない事情

 チームとして初めて2位で進出したCSで2年前の再現はあるのか。初の地元開催となるファーストステージは、今季43勝27敗と圧倒的な強さを誇る横浜スタジアムのアドバンテージが生きそうだ。

 ファイナルステージの相手は巨人。今季の対戦成績が11勝14敗、東京ドームでも5勝7敗と、ほぼ互角の成績のリーグチャンピオン相手の下克上を目指す。投手では今季13勝のエース今永、打者では今季43本塁打中13本が巨人戦のソトなどがキーマンとなるが、ラミレス監督には投打で「ジョーカー」の存在がある。

 投手ではシーズン終盤、故障で戦列を離れていた濱口遥大と東克樹の復帰が見込めることだ。巨人は今季の64敗のうち、相手が左腕先発の試合で35敗と「左腕アレルギー」の傾向がある。特に東はルーキーイヤーの昨季、対巨人6試合で5勝0敗、防御率1.33、今季も3試合で2勝1敗と抜群の強さを誇り、左ひじの張りから復帰できれば、大きな戦力となる。

 打者では梶谷隆幸が、巨人にとっては不気味な存在になる。今季は不振で二軍生活が長かったが、8月に一軍復帰を果たすと、広島との2位攻防戦で7点差逆転に導く同点満塁本塁打を放つなど、チームに勢いをもたらす活躍を見せた。特に巨人戦には強く、一軍定着した13年から7年間で4度、対戦打率で3割以上をマークしており、15年には6本塁打、17年も5本塁打を記録。16年にDeNAはシーズン終盤に巨人に6連勝しているが、その間の梶谷の対戦打率は5割を超え、CSでも初戦でマイコラスから同点弾を放ってファイナル進出に貢献した。

 日本シリーズ進出を果たした17年の再現はなるのか。ラミレス監督には勝たなければならない事情があると、スポーツ紙DeNA担当記者が言う。

「9月のオーナー会議に出席したDeNAの南場智子オーナーが、ラミレス監督の来季去就について『口にするには微妙な立場』と明言を避けています。4年間で三度、CS進出を果たした監督ですが、オーナーの評価はそれほど高くない。今季の2位が確定した後も、三原一晃球団代表が、去就は全試合終了後と微妙なニュアンスでした。17年にはCS進出が決定した時点で続投要請をしていたことを考えると、来季も監督の座は安泰というわけではなさそうです」

 続投にはポストシーズンの成績が重要になる、と担当記者は続ける。

「チームが日本シリーズ進出、さらには1998年以来の日本一となれば、さすがに球団も監督解任、というわけにはいかなくなるはずです。“プランB”を成し遂げたラミレス監督は、ポストシーズンを勝ち抜くために、なりふり構わず策を講じてくるのではないでしょうか」

「短期決戦の鬼」の異名も持つラミレス監督の采配に注目だ。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月30日掲載

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