再始動「山口真帆」の通信簿 被害者が“悪”にされる芸能界を変えた功績は大

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芸能界の悪習を打ち砕いた“メディアの民主化”

 それは能年玲奈や安室奈美恵の独立騒動や小林幸子の事務所のお家騒動など、最近まで行われてきた。メディアがたびたび報じる「洗脳騒動」がそれだ。「タレントの独立や移籍は許されない。タレントも悪いが、タレントをそそのかしている人間がいるはずだから、まずそいつを叩け」という芸能界の論理のもと、メディアがタレント批判を繰り返し垂れ流し、独立や移籍の不当性を世間に広める。メディアが情報を独占していた時代は、実にこれが効いたのだった。

 その図式を変える転機となったのが、NGT48の騒動だ。この事件で山口は、自宅玄関先で男2人から暴行を受けたことを動画配信サービスで告白。運営側の対応をネット上で批判し続け、SNSで拡散された結果、グループの活動は休止に追い込まれた。もしも安西マリアの時代にネットインフラが充実していたら、先に紹介した事件も、また違った展開になったことだろう。

 雑誌やテレビなどの従来メディアは、芸能事務所の意向に逆らえば、タレントを引き揚げるという報復も覚悟しなければならない。が、SNSを使っている無数のユーザーにまでそれを強いることは不可能だ。山口の騒動では、彼女が導いた“メディアの民主化”が芸能界の論理を打ち砕いたといえるだろう。

 電通の調べによれば、2018年の地上波テレビ広告費は1兆7848億円だったのに対して、インターネット広告費は1兆7589億円と、かなり拮抗しており、ネットがテレビを追い抜くのは時間の問題といえる。テレビよりもネットがメディアの主流となってくる中で、芸能事務所が“誘導”できることは、どんどん限られてくるようになるだろう。

 もっとも先述のように、山口は女優、タレントとしての実力も未知数なだけに、今後の芸能活動が必ずしもうまく行くとは限らないだろう。一部報道によれば、山口に対する暴行事件の加害者が「事件前から山口とつながりがあった」と主張しているそうで、これが事実であれば、騒動の前提が覆ってしまう。他の事務所が山口との共演に二の足を踏んでいるという報道もある。昔、渡辺プロダクションから独立した森進一が「他のタレントに独立をそそのかした」という理由で複数の芸能事務所から共演を拒否され、窮地に立たされたのを思い出すが、山口の場合、今後どうなるかは分からない。

 山口の将来性をふくめ、何事も順風満帆にいくわけではない。芸能界も同様に前進しつつ、時に後退しながら、あるべきところに落ち着けばよいが……。

文/星野陽平(フリーライター)

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月27日掲載

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