「英語入試改革」に全国の高校から不満噴出! 実施を民間に丸投げする文科省の罪

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素人の案を官邸がゴリ押し

 なぜ民間試験なのか、経緯を確認しておく必要もあるだろう。江利川教授は、

「グローバル化が進むなか、ビジネスの場で使える英語力を習得した人材がほしい、という要求が財界で高まり、それに官邸が応えるかたちで始まったのです」

 と、遡って説明する。

「まず13年4月、経済同友会が“大学の英語入試にTOEFLを大規模に導入する”と提言し、その年の6月に安倍内閣は、大学入試で外部検定試験の活用をめざす“第2期教育振興基本計画”を閣議決定しました。本来なら共通テストにスピーキングの試験を加えるべきですが、財務省も予算をつけることに消極的で、安易で危険な“民営化”に踏み切ったのです」

 そして、こう踏み込む。

「民間組織が絡むと利権や癒着が発生しがちです。14年、文科省が設置した“英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会”のメンバーに、英検やベネッセの人間が入ったのは、教科書選定に出版社が関わるようなもの。またTOEFL活用を提言した楽天の三木谷浩史社長は、文科省の“英語教育の在り方に関する有識者会議”の委員を務め、14年から2年間、社員を文科省に出向させ、英語教育改革に従事させました。楽天は17年に英語教育市場に参入し、傘下の教材会社社長にその社員が就任したのです」

 そのうえで江利川教授は、

「専門家や現場の声を無視して改革を進め、素人が作った案を官邸がゴリ押しする構図。人の一生を左右する入試が、こんなプロセスで決められていいのか」

 と憤る。

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