「川井梨紗子」が3年連続で世界一、馨さんとの戦いでは精神的に強くなれた

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姉妹で東京五輪

 妹の友香子との姉妹五輪出場を狙う川井梨紗子はこのために自ら階級を変えていた。もともとは伊調馨と同じ63キロ級だった。川井はリオデジャネイロ五輪では見事に金を取ったが、この時は伊調と階級を変えていた。周囲の勧めもあったが、「当時、馨さんとの代表争いを逃げたように思われることが引っかかっていた」という。

 だが、今回は、昨年のパワハラ騒動などもあったことで伊調薫の復活劇が全国民に注目された中、彼女との三度にわたる厳しい戦いを乗り越えての世界選手権代表、そして念願の東京五輪内定の獲得だった。川井梨紗子は「馨さんとの戦いでは精神面で強くなれたと思います」と振り返った。

「何度も階級を変えて出てきたので気にならない」の言葉通り、姉には不安を感じさせるものはなかった。妹の友香子は三回戦でキルギスの選手を相手に1-1の同点から試合終了直前に、無理なローリングを返されてまさかのフォール負けをし泣き崩れた。しかしキルギスの選手が決勝まで勝ち上がったため敗者復活戦に回り、20日に行われた敗者復活戦を勝ち上がって三位決定戦で北朝鮮の選手を破り三位となった。これで友香子も東京五輪に内定。見事に「姉妹で東京五輪」となった。

 姉の梨紗子は前日、「妹が負けた時はホテルにいて見ていなかった。ホテルでテレビつけてもやってなかった。後で聞いてショックだった。でも私が優勝したのが励みになったら」と話したが、スタンドから母の初江さんと必死に応援。勝利の瞬間は再び、泣き崩れていた。

 伊調馨は川井友香子が三位以内に入れなかった場合、彼女と同じ階級に変更して挑戦する可能性は残っていたが今大会の川井姉妹の奮戦により東京五輪への道は完全に断たれた。現時点では進退を明らかにしていない。

 川井姉妹を早くから指導してきた栄和人氏(元全日本代表強化本部長)は今大会、自費参加してスタンドで声を嗄らしていた。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月23日掲載

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