北方領土返還は絶望的…官邸主導と閣僚人事で頭を抱える外務省

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 今月5日、ロシアのウラジオストクで開かれた日露首脳会談。官邸が4島返還から2島返還に方針転換をしてから1年近くが経つが、今回も成果ゼロに終わったのはご承知の通り。

 政治部記者によれば、

「会談の直前にはプーチン大統領が色丹島にできた水産加工場の稼働式典にビデオ参加。日本への当てつけに他ならず、政府は外務省を通じて抗議しましたが、当の安倍総理は会談でも日本の立場を伝えることくらいしかできなかったそう」

 プーチン大統領との信頼関係を誇示し、前向きな姿勢を崩さない安倍総理だが、

「はっきり言って北方領土の返還は絶望的。ロシア国内では、プーチンの支持率が20%近く下落しており、返還に応じれば、致命傷になりかねない。今回先方は、日米安保条約に加えてイージス・アショアの配備にまで文句をつけてきた。日本にとっては到底のめない条件で、プーチンに返還する気がないのは明白です」(同)

 頭を抱えるのは外務省。関係者によれば、

「官邸主導という美名のもと外務省は蚊帳の外に追いやられ、外務省のロシアスクールは今や壊滅状態。官邸にモノ申せた硬骨の官僚も今は昔となり、ロシアスクールの中心人物だった原田親仁(ちかひと)・元駐露大使も2年前に対露交渉の担当から外されてしまった。今の外務省には、局長級にロシアスクールの人材がほとんどいないのです」

 さらに頭が痛いのは、今般の閣僚人事で、

「茂木敏充新外相に期待する声はゼロに等しい。論功行賞でポストをあてがわれたに過ぎず、対露交渉は丸っきり素人です。前外相の河野太郎さんは外相専用機の件など根回しが下手な部分はありましたが、まだ芯があった。安倍さんの側近である茂木さんの外相就任で、外務省はさらに官邸に意見できなくなってしまうでしょう」(同)

 北方領土が遠くかすんでいる。

週刊新潮 2019年9月19日号掲載

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