ユーザー必見、ドコモはまだ終わっていない!? Amazonで力を発揮する「d払い」の実力

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“割高で複雑”な料金プランについに行政指導が下され、ビジネスモデルの改革を迫られている大手キャリア。こうした動きに連動するように、各キャリアともスマホ決済サービスに進出している。ペイ戦国時代の筆頭ともいえる「PayPay」は事実上のソフトバンクpayだし、auはこの4月から「au PAY」をスタートさせた。では、他キャリアや格安スマホ(MVNO)の台頭で、本業が満身創痍なドコモはどうだろう。

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 今年3月、日本政府は電気通信事業法の改正案を閣議決定した。年内をメドに、スマホを途中解約した場合の違約金や、(違約金が発生する原因となっている)端末を買うかわりに月々の支払い料金を割り引く制度を、是正していく構えだ。この問題の背景には、高すぎる日本の携帯電話の料金、各キャリアによるユーザーの囲い込みの事情がある。

 ドコモに対しても、厳しい目はそそがれた。対象端末を購入すると毎月1500円分の通信料が割引されるプラン「docomo with」に対し、総務省から「通信料金と端末代金の完全分離」に反する、と名指しで指導が入り、5月いっぱいでサービスを終了したばかりだ。

 2018年6月に総務省が発表した携帯電話キャリア別のシェアでは、NTTドコモが38.7%、KDDI(au)が27.6%、ソフトバンクが23.1%、MVNO(格安SIM系)が10.6%。ドコモはかろうじてトップを誇っているものの、3年ほど前までのシェアは45%近かったことを鑑みると、ここ最近の下落傾向は顕著といえるだろう。代わりにKDDI、そしてMVNOがじわじわとシェアを広げている。

 テレビCMの話題性という意味でも、ドコモの劣勢は否めない。ソフトバンクはお父さん犬が登場する「白戸家」シリーズ、auは桃太郎、浦島太郎、金太郎の「三太郎」シリーズが名CMとして続く中、ドコモのCMだけがぱっとしない、という人も多いのではないだろか。

 そんなドコモが活路を見いだそうとしているのが、スマホ決済サービスの分野である。

 改めて説明すれば、スマホ決済とは、財布やクレジットカードを持ち歩かなくても、スマホをレジにかざしたりするだけで買い物ができる、という仕組みの事。各サービスは独自のポイント制度を設けており、携帯電話の利用料金や日常の買い物の支払いに応じてポイントが貯められる形を採用している。

 また、この数年各社がつぎつぎと投入する各電子決済サービスも、キャリアのポイントと連携している。ドコモも例外ではなく、キャンペーン中に「おサイフケータイ」や「iD」などを利用して買い物すると、ポイントが通常よりも多く付与されたりもする。1万円の買い物で30%還元ということであれば、3千円分得する計算だ。

 一昔前のドコモには、ブランド力を武器にユーザーから割高な利用料金をせしめる“殿様商売”という声も少なくなかった。そんなドコモが現在打ち出しているサービスの実力はどれほどなのだろう。

dカードがあれば、二重取りでポイントが貯まる

 たとえば、こんなドコモユーザーがいたとしよう。

・ドコモで15年以上契約継続しているプラチナステージ会員(4年未満が1stステージ、4年以上が2ndステージ、8年以上が3rdステージ、10年以上が4thステージ)
・月額使用料は約1万円
・支払いは口座振替
・dポイントクラブ(dポイントを貯めたり使ったりできるプログラム)には入っている
・dカード(ドコモのクレジットカード)不所持
・ネット通販や普段の買い物には、ドコモ発行ではない他社クレジットカードを使用

 これはまごうことなき筆者のことだが、月々の利用料金で得られるdポイントは100ポイント程度(100円相当)。筆者は15年以上ドコモを利用しているが、「iD」やら「モバイルSuica」の電子マネーの類をすべて避けてきた身であり、耳慣れない決済サービスなどに対して警戒を示さずにはいられず、ポイントの使い方など知るべくもない、という状況だ。

 この状況を、消費生活ジャーナリストの岩田昭男氏は、「ポイントの垂れ流し」と指摘する。ドコモのクレジットカードを所持しているのといないのとでは、取得できるポイントに大きな差が出るというのだ。

「『dカードGOLD』は年会費1万円ですが、これに入会することで携帯料金の10%がポイント還元されます。毎月9千円以上利用するのであれば年会費はポイントでまかなえるので、実質無料になります」(岩田氏、以下同)

 さらにdカードGOLDには、紛失や盗難、修理不能となった場合に最大10万円の端末補償に加えて、海外旅行保険、国内空港ラウンジを無料で利用できる特典なども付く。カードをキャリアの利用料金にしか使わない場合にも、旅行する機会の多い人にとってはメリットが大きいという。

 では、すでにdカード以外のクレジットカードを愛用している人間は、どうすればいいのか。なかには、既存のクレカを携帯料金の支払いに使っている人もいるだろう。その場合、支払いをdカードに切り替える必要はあるのだろうか。これ以上カードは増やしたくないのですが……。

「他社のカードによる携帯料金の支払いであっても、dカードGOLDを所持しているだけで使用料金の10%のポイントがつきます。その場合、他社カードで支払えばその規定のポイントがプラスして付与されるため、ポイントの二重取りが可能です。むしろ、支払いのときは他社カードで支払ったほうが得なのです」

 また、ローソンやマツモトキヨシ、ENEOSなどのdカード特約店で、dカードGOLDでクレジット払いすれば、通常のポイント還元率1%の上にさらにポイントが加算されるため、塵も積もれば……を期待できそうだ。

 もちろん、クレジット機能のないdポイントカード提示でもポイントは貯まる。100円で1ポイント貯まり、加盟店では1ポイント=1円として利用できる。「dポイントは機種変更するときにしか使ったことがない」という人は、新たな選択肢として近隣の加盟店をチェックしてみるのもいいかもしれない。

 とはいえ、こうしたサービスは多かれ少なかれ、他キャリアも導入している。ドコモの最大の武器は、ずばりAmazonの活用だ。

Amazonでも使える「d払い」は条件をこなすほどお得

 ドコモにおいて特筆すべきなのは2018年4月にスタートしたモバイル決済サービス「d払い」だ。こちらの利用は、ドコモユーザーでなくてもOK。実店鋪で利用する場合、QRコードやバーコードをスマホ画面に表示させ、レジの端末で読み取ることで精算が完了し、dポイントが貯まる。大手コンビニではローソンやファミリーマートなどで利用できる。

「d払いすることで、実店舗での利用で0.5%、ネットでの利用で1%のdポイントが付きます。キャリアの利用料金との合算払いでdカードを使用する場合は、さらに1%がポイント還元されます」

 PayPayの通常ポイント還元率は2019年5月から引き上げられ、電子マネーの「PayPay残高」「Yahoo!マネー」、クレジットカードの「Yahoo! JAPANカード」で支払う場合は3%(10月以降は1.5%)、それ以外のクレジットカードの場合は0.5%(10月以降はポイント還元対象外)。au PAYの通常ポイント還元率は0.5%で、貯まったauポイントをau WALLETプリペイドカードの残高にチャージすることでネットショッピングに利用可能だ。還元率のお得度はPayPay、d払い、au PAYの順で、まずまずといったところか。

 だが、ドコモユーザーであれば何より恩恵にあずかれるのが、2018年12月より可能になったAmazonでのd払いだ。キャンペーン期間中などにユーザー認証のステップを踏みAmazonでd払いすることで、ポイント還元率がアップしていく。今年6月には、最大50倍ものdポイントが還元されるキャンペーンもあった。

 ドコモの携帯を10年以上使っている人(dポイントクラブのプラチナステージ及び4thステージ会員)であれば、毎週火曜日にイオンシネマで、1100円で映画を観られる「ドコモチューズデー」というサービスもある。

 ポイントサイトやキャリアメールに流れるお知らせをスルーしていると、こういった情報には永遠に気付けないのだ。

「世の中にはいろんな得が張り巡らされていて、よく知って使うとしっかり得できるようになっています。新しいものにどんどんチャレンジしていけば、自分にフィットする便利なものに出会えるかもしれませんよ」

 ただし、岩田氏はモバイル決済機能を使いこなしているが、キャッシュレス生活を続けると弊害も出やすいという。

「かざすだけや見せるだけの決済方法は、その手軽さゆえに現金生活と比べると金銭感覚が狂いがちです。自分で利用上限金額を設定するなど、節度を持って利用したほうがいいですね」

 先日、筆者はスマホにd払いのアプリをダウンロードし、財布を持たずにファミリーマートに行ってみた。店員に“d払いでお願いします”と告げて画面のバーコードを読み取ってもらい、会計はすんなり完了した。0.5%のお得である。 これまで「かざすだけ」の決済方法は勝手に金を吸い取られるように感じ気が引けていたが、「バーコードを表示させる」「店員に読み取ってもらう」というひと手間は抵抗が少なかった。「スマホひとつで」とはこういう感覚なのかもしれない。

 筆者のように、キャリアのサービスに無頓着なユーザーの食指が動くような施策の周知は、ドコモが苦境を脱する活路になり得るのではないだろうか。

取材・文/松嶋千春(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年9月17日掲載

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