コンビニ“夏売りおでん”が激減 店側の負担軽減で来年からはレンチンも登場

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つゆの補充にからし無償提供

 ローソンのバイヤー、そして店長経験もある流通アナリストの渡辺広明氏は、次のように解説する。

「おでんは特に劣化しやすい商品なんです。80度以上がおでん什器の適正温度とされていて、店内のいい匂いはこの設定によるもの。一方で、放置しているとつゆが煮詰まり、不味くなってしまう。だから店員がその都度つゆを補充する必要があり、おでんダネも、ものによっては4~10時間で廃棄しなければなりません」

 セルフサービスではなく、店員さんにおでんをすくってもらう方式の店もある。レジが混んでいる時はなかなか頼みにくく気まずいものだが、これも店側には負担だろう。

「最近は『からし』以外に『ゆずこしょう』などの薬味を用意している店もありますが、これらに加えて専用容器など、無償でお客様に提供しなくてはならないものが、おでんには多い。什器の清掃や調理にも1時間ほどかかります。こうした手間を考えれば、おでんだけで利益が出るか否かの境は“1日100個”ですね」

 にも関わらず、店舗はおでんを売り、しかも多くは8月からと早い売り出しだった。本格的なシーズンは先ながら「気温が下がった日は売れる」(渡辺氏)ゆえの戦略だ。ただし暑ければ売れず、赤字・食品廃棄につながるのは、冒頭でふれたオーナーたちの訴えのとおり--。

「おでんを早期から売るのは、各チェーンとも本部の意向によるところが大きい。フランチャイズの各店に指示が“徹底”できているかを計るバロメーターとなっているフシがありました。ただ、様々なコンビニ業界の問題が明らかになっている今年は、8月からの販売は激減しました。昨年に比べれば3割ぐらいに減ったでしょう。そこでコンビニ側も、対策を講じ始めています」

 そうした取り組みのひとつが、たとえばファミリーマートが年明けの1月から本格導入予定の「レンジアップおでん」だ。こちらは、客の注文を受けた店員が、パックに入ったおでんをレンジ調理して提供するもの。調理負担はあるものの、渡辺氏が挙げた管理の手間は解消され、〈全体の食品廃棄も10%減少する見込み〉(流通ニュース08月09日)というから、今後おでんは“レンチン”が主流になるかもしれない……?

「過度なファーストフードの販売合戦は、負担が大きい。もう止めたほうが良いと思います。しかしながら、10月からは軽減税率が導入され、コンビニは外食産業との“胃袋争奪戦”を強いられます。コンビニの武器は持ち帰りできる弁当や冷凍食品、そしてファーストフードなんです」

 おでんを始めとしたファーストフードは今、コンビニの“両刃の剣”となりつつあるようだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月15日掲載

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