「ルポ 平成ネット犯罪」の著者が語る、座間市9人殺害「白石隆浩被告」との面会

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 今やインターネットは、日常生活には欠かせない存在になったが、その一方で、アンダーグラウンドな世界も広がっている。なかでも、“自殺系サイト”を利用して男女9人を次々に歯牙にかけた白石隆浩被告のケースは、犯罪史上類を見ない猟奇殺人だった。その驚くべき犯行の手口とは――。

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 今年の4月1日午前11時41分、菅義偉官房長官が新元号を「令和」と発表した。その翌日、東京の立川拘置所を訪れた男性がいた。

「令和で祝福ムードでしたから、メディアの取材もあまり来ていないと思ったのです」

 そう語るのは、ジャーナリストの渋井哲也氏である。同氏はこの9月に、売買春の温床となる“出会い系サイト”、性的欲求の餌食となった“自殺系サイト”など、様々なネット犯罪を分析した『ルポ 平成ネット犯罪』(ちくま新書)を出版。主にネット事件、自殺問題、サブカルチャーなどを取材し、『明日、自殺しませんか――男女七人ネット心中』(幻冬舎文庫)、『学校裏サイト――進化するネットいじめ』(晋遊舎ブラック新書)などの著書がある。

 渋井氏が接見したのは、2017年10月に発生した座間市9人殺害事件の白石隆浩被告(29)である。言うまでもなく、彼はネットで自殺願望者を誘い出し、アパートに招いて次々と殺害、遺体をバラバラに解体。その後、9人の頭部や肉をそぎ落とした骨約240本が8つのクーラーボックスなどから発見され、世間を恐怖に陥れた。

「白石被告は、逮捕された時の写真よりふっくらとして髪も伸びていました。あんな猟奇的殺人を犯したのに、怖さがない。ごく普通の青年で淡々としていましたね。社会との接点がないからか、遺族の反応などは気にしていない。罪悪感もないようでした」

 白石被告がインターネットを使い始めたのは、中学生の頃だった。

「親から携帯を持たされたのです。それで、ネットナンパを始めたのが17歳のとき。この年齢でネットナンパとは、ちょっと早いですね。これによって出会えた女性は月に1人くらい、社会人になってからは1、2週に1人だったそうで、かなりの人数の女性と関係を持ったことになります。最終は数百人に上るとみられます」

 ネットナンパで一番引っかかりやすかったのは、自殺願望を持った女性だったという。

「“死にたい”とつぶやく人は、ナンパされるのが目的ではないにせよ、誘いやすいのです。死にたいと考えているような人は、どうにでもなれと思っているし、寂しくて、とにかく誰かに話を聞いてもらいたい、誰かと会いたい、と思っていますからね」

 白石被告は、事件前、新宿・歌舞伎町で風俗店のスカウトをしていたが、17年2月、売春させると知りながら風俗店に女性を紹介したため、職業安定法違反容疑で逮捕。懲役1年2月、執行猶予3年の有罪判決を受けている。

「白石被告は、歌舞伎町で実際に女性に声をかけるより、Twitterなどでスカウトするのを得意としていましたが、実は、ヒモになりたかったのです。殺害された9人のうち、最初の被害女性(21)はお金を持っていた。彼女に(事件現場となった)アパートの契約をしてもらい、50万円を出してもらっています。初めは殺す気などなかったそうです。ところが、彼女に付き合っている男性がいることが発覚。自分は捨てられるかもしれない、アパートから出ていけと言われるかもしれないと思い、殺人に及んだのです」

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