「ルポ 平成ネット犯罪」の著者が語る、座間市9人殺害「白石隆浩被告」との面会

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“10人目になりたい”

 2人目以降の殺人はどうか。『ルポ 平成ネット犯罪』で、白石被告はこう述べている。

〈「(被害者が)昏睡状態のままでのセックスに目覚めてしまった。でも、そのまま帰らせようとすると通報されるかもしれない。執行猶予中だったので、見つかれば、今度は一発で実刑になるかと思った」
――(3人目の殺害になる)男性も殺せた?
「酒を飲ませた。酒には睡眠薬と安定剤を入れていた。眠ったところを絞殺したので、難しくはなかった」
――逮捕後、「本当に死にたい人はいなかった」と供述しているが、その意味は?
「DM(引用者註:ダイレクトメール)などで悩み相談になることがあったが、それぞれに理由があるということ。学校に行きたくないとか、彼氏にふられたとか。ある女性はよくよく聞くと、『家出をしたい』と言っていた。『なぜ?』と聞くと、『母親の管理がきついため』ということだった。そこで『うちに来る? 養うよ』と誘うと、簡単についてきた。こんな風に理由があったのです」〉

「昏睡状態の相手とのセックスに快楽を覚え、警察沙汰になることを恐れて殺害し、バラバラに解体するの繰り返しですね。遺体は風呂場で解体したそうですが、発見された遺骨は約240本。これは人間1人分の骨です。捜査関係者の話では、白石被告は遺体を鍋で煮たそうですが、臭くて食べられなかったと供述したそうです。最初から食べるために煮たのかは不明ですが、煮て骨を溶かそうとしたのかもしれません」

 渋井氏は、Twitterを使って座間事件に関するアンケートをとっている。この事件で思ったことを自由回答で聞いたところ、

「回答者55人の中で、『10人目(の被害者)になりたい』『羨ましい』『一緒に死にたい』『私も殺されたかった』と答えたのが14人いました。このことを白石被告に伝えると、『驚きです。その人たちはレイプされて殺されることもあるということを知っているのか?』と他人事のように答えていました」

 なぜ、ネット犯罪は後を絶たないのか。

「元々、ネットはポジティブなものでした。学校や会社、家庭で相談できない悩みをネット上で聞いてもらい、共感してもらえる。趣味を通じて、チャットで交流することができる。そういう意味でポジティブな空間なのです。ところが、ネット上のトラブルが犯罪の引き金になることがあります。ネットを使っての遊び方に慣れている人は、トラブルがあっても、SNSなどの連絡を断てば、怒りをコントロールできますが、慣れていない人は、怒りをコントロールできない場合があります。たとえば、学校の同級生など実生活での知人がLINEやTwitterなどに入ってくると、調整が難しくなります。ネット上でトラブルが起き、そのトラブル相手と、翌日学校で顔を合わせたりすると、怒りのコントロールができなくなり、爆発してしまう。04年に発生した佐世保小6女児同級生殺害事件がその典型でしたね。ネット上での書き込みを巡って同級生とトラブルになり、怒りを抑えられなくなった加害女児が、被害女児を学校の学習ルームに呼び出し、カッターナイフで同級生の頸動脈と左手を切りつけて殺害した事件です。普通の人が、ネット上のトラブルによって事件を起こしてしまう時代なのです」

週刊新潮WEB取材班

2019年9月13日掲載

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