久保建英はパラグアイ戦でなぜ得点できなかったのか 日本代表を徹底検証

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中島・南野・久保の“共演”に期待

 課題の次は収穫を見よう。前半の試合を見る限り、森保ジャパンは中島のチームになったと言える。

 左サイドに張るのではなく、パラグアイの4−1−4−1システムの手薄なボランチの「1」のスペースの中央寄りに入り、得意のドリブル突破から好機を演出した。もっとも、この日のパラグアイ相手ならこれくらいの活躍はできて当然かもしれない。

 そんな中島や、縦パスを受けてマーカーのアタックできないエリアに巧みにトラップする大迫に勝るとも劣らない存在感を発揮したのが橋本拳人(26)と冨安健洋(20)だ。

 前半立ち上がりから、左サイドに位置した橋本が攻撃の起点となり、元FC東京コンビの中島へのパスで2点だけでなく、それ以外にもチャンスシーンに絡んでいた。

 ボランチは往々にして、DFラインからパスを受けると相手を揺さぶるための横パスか、セイフティーにバックパスの繰り返しを選択しがちだが、橋本は常に縦への展開を狙っていた。今シーズンのJ1リーグで首位のFC東京では、長谷川健太監督(53)の「ファストブレイク」がキーワードのため、所属クラブでのアグレッシブな姿勢がパラグアイ戦では生きていた。

 元々ボール奪取など守備能力への評価は高く、2016年リオ五輪の有力候補だった。今年3月に守田英正(24)の負傷により急きょ初代表に招集されたが、代表3試合目となるパラグアイ戦では歴戦の勇士のように自信に満ちたプレーで試合をコントロールした。

 当の橋本は「代表に定着できると思うか」という質問に、「いや、全然思っていません。今日もやれたことと、やれないことがあり、やれたこと、得たものもあったので、ミャンマー戦に出る機会があれば勝利に貢献したいです」とあくまで謙虚に答えていた。

 そして前半はCBで出場し、後半は右SBに起用された冨安も評価を高めた選手と言える。CBとしての守備能力の高さと左右両足からの正確なフィードはこれまでもストロングポイントだった。

 それに加え、右SBでは果敢な攻撃参加で新たな一面を披露。このため森保監督も「日本のオプションとしてどういう効果をもたらすかを考えつつ、植田直通(24)もクラブでいいプレーをしているので、使うため冨安を右に持ってきた。改めてどういう戦いができるかを試すために代えた」とコンバートの理由を明かした。

 現状を見つつ、将来を見据えると、吉田麻也(31)と長友、酒井のバックアッパーは必要になる。CB候補には冨安と植田、さらには今回招集されていない昌子源(26)も候補だろう。そして冨安が右SBとして目処が立ったことで、室屋成(25)との争いが始まる。問題は左SBで、長友の後継者にこれといった有力候補がいないことだ。

 ただそれも、贅沢な悩みかもしれない。パラグアイの代表メンバー23人のうち国内リーグでプレーしている選手も、ヨーロッパでプレーしている選手も、どちらも数人にとどまる。多くの選手はブラジルやアルゼンチンでプレーする。南米ではよくある傾向だ。

 それに対し日本は、国内リーグでプレーしているのは4人だけと少なく、ヨーロッパでプレーしている選手は18人を数える。さらにヨーロッパ5大リーグと言われるイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスには9人、それ以外にもポルトガルの名門ポルトやオランダのPSVでプレーする選手もいる。時代が変わったと感じるサッカーファンは多いだろう。

 いずれにしても、10日のミャンマー戦が楽しみとなったのは間違いない。もし久保のコンディションが万全となったら、どんなプレーを見せるのか、そして中島・南野・久保の“共演”にも期待が高まる。卓越したドリブルにパスセンスも兼ね備えた3人が組むと、どんなファンタジーが起きるのか、期待するファンも多いだろう。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月10日掲載

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