久保建英はパラグアイ戦でなぜ得点できなかったのか 日本代表を徹底検証

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疲労で失われたスピード

 後半24分にはペナルティエリア内右で、角度がないように見える位置から左足でクロスバー直撃のシュートを放った。これはFC東京時代から得意とするプレーで、普通の選手ならシュートは難しいと思われる角度からでも、簡単に左右両足でシュートを打てる久保ならではの感覚だ。天性のものだろう。

 そんな久保に対し、後半28分、左サイドでカットインした原口元気(28)がシュートではなく久保へのラストパスを選択したのも驚きだった。

 左サイドでは長友に代わった安西幸輝(24)がオーバーラップしていた。そうした動きをダミーに使ってカットインからのシュートを選択する、良い意味で“エゴイスト”の原口が、パスを選択したのは久保の才能を認めているからに違いない。

 だが、久保は代表初ゴールを決めることができなかった。才能があふれる選手だからこそ、ファン・サポーターはもちろんのことメディアも代表初ゴールを期待している。

 なぜ点を取れなかったのか、その原因はシンプルだ。日本代表のコパ・アメリカ招集に始まり、レアル・マドリーへの移籍とアメリカとヨーロッパでのツアー、さらにはマジョルカへのレンタル移籍と、生活環境の目まぐるしい変化による疲労が考えられる。

 久保が今シーズンに飛躍を遂げた原動力は、瞬時に相手を置き去りにするスピードだ。それがパラグアイ戦では見られなかった。プレーにスピードとキレのない久保では、欧米やアフリカ勢、そして南米の選手に対して優位を保つことは難しい。彼らの身体能力は、久保に限らず日本人選手を上回っているからだ。

 後半が始まってすぐの4分、パラグアイの反則で久保はFKを獲得した。だが本調子の久保なら、あそこは抜いて決定機を演出できたはずだ。それこそが彼のストロングポイントでもある。

 久保以外の選手にも目を向けてみよう。今回のパラグアイ戦で森保一監督(51)は、現状でベストのスタメンを送り出したと思う。そして前半、大迫、南野、中島翔哉(25)による攻撃陣のハーモニーに加われなかったのが堂安律(21)だった。

 前半22分、長友佑都(32)へのパスは見事であり、これが先制点につながった。だが、それ以外の見せ場と言えば、同26分にGKとの1対1から股間を狙ったシュートくらいだった。

 右サイドに張っているもののマーカーを抜ききることはできず、個人技を披露する場面はほとんどなかった。その原因としては直前にオランダのサッカークラブ、PSVアイントホーフェンへの移籍が決まるなど心身のストレスからコンディションの調整が難しかったのかもしれない。

 さらには彼のポジションには久保という強烈なライバルがいるためストレスを感じていた可能性もある。

 実際に後半開始前、コンディション不良によるのか堂安に替わって久保が起用された。それだけに前半の堂安には右サイドで張るよりも中央にポジションを移し、南野や中島との距離を詰めてワンタッチによるコンビネーションでの崩しを見たかった。

 彼が中央にポジションを移せば右サイドにスペースができるだけに、酒井宏樹(29)の攻撃参加も増えたはず。しかし実際には前半30分の2点目をアシストしたシーン以外、酒井がクロスを上げる場面はほとんどなかった。

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