久保建英はパラグアイ戦でなぜ得点できなかったのか 日本代表を徹底検証

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確かに非凡だが……

 サッカー日本代表は9月10日、ミャンマー代表と戦う。地上波は日本テレビが午後9時から放送を行う予定だ。2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選における初戦になる。

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 7月に発表されたFIFA世界ランキングで日本は33位。今回予選で日本はF組に入っている。対戦相手のランキングを見ると、ミャンマーは135位。以下、キルギス(95位)、タジキスタン(119位)、モンゴル(187位)という顔ぶれだ。

 いずれも格下だが、サッカーの難しさは、弱い相手の方が厄介な試合になりやすいことだ。引き分け狙いで一切攻撃せず、守りを固めに固められると、どれほど攻撃力に富むチームでも攻めあぐねてしまう。

 それこそ日本五輪代表が1996年、アトランタオリンピックでブラジルを1−0で撃破したという劇的な実例を持つ。「マイアミの奇跡」としてご記憶の方も多いだろう。

 ミャンマー戦の“壮行試合”という位置づけで、9月5日にキリンチャレンジ杯のパラグアイ戦が茨城県のカシマスタジアムで行われた。日本は大迫勇也(29)と南野拓実(24)のゴールで2−0と勝利を収めた。ちなみにパラグアイはFIFAランク39位と、ほぼ日本と拮抗している。

 ミャンマー戦を目前に控えた今、改めてパラグアイ戦を振り返ってみたい。試合内容は大きく異なるかもしれないが、日本代表にどんな課題が浮き彫りになり、どんな収穫を得たのか、確認しておくことは重要だろう。

 鍵を握るのは、もちろん久保建英(18)。そもそもパラグアイ戦でスタジアムが最も盛り上がったのは後半、久保の名前がアナウンスされた時だった。

 大迫や南野の得点時とは違ったどよめきがカシマスタジアムに沸き起こった。出場が発表されただけでサポーターが反応する選手は、近年では本田圭佑(33)と香川真司(30)くらいだろう。

 2人にはそれだけの“実績”がある。だが久保は代表選手としては何の戦歴もない。それだけファンやサポーターの期待が大きいことの裏返しであり、過去にもあまり例のない現象だろう。

 このパラグアイ戦の結果を、翌日のスポーツ紙は以下のような見出しで報じた。(註:全角数字を半角数字に改めるなど、デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)

「見せ場ばかりの45分 久保 直接FK ドリブル突破 バー直撃シュート 『打ったからには決めないと』3度天を仰ぐ」(日刊スポーツ)

「もっとやれる!! 久保 チーム最多タイシュート5本も不発 A代表最年少弾お預けも 次戦10日ミャンマー戦で『トリプル快挙』必ず 『打ったからには全部入れないといけない』」(スポーツニッポン)

 いずれも期待を込めた記事になっているわけだが、どちらが久保の実状に近い報道かと言えばスポニチの方ではないだろうか。

 確かに非凡さを見せつけた瞬間は少なくなかった。例えば後半10分、右タッチライン際で3人のパラグアイ選手に囲まれながらも、それを打開して大迫勇也へとパスを出したプレーは圧巻だった。

 ルーズボールがマイボールになる運もあったが、驚かされたのは3人に囲まれながらもパニックを起こさず冷静に対処したことだ。とても18歳とは思えない。

 1974年の西ドイツW杯で、ヨハン・クライフ(1947−2016)がキャプテンを務めたオランダは、リヌス・ミケルス監督(1928−2005)の発案した全員攻撃・全員守備の「オールコートプレス(トータルフットボール)」でサッカーの概念を一変した。

 そのエッセンスを元日本代表監督のオランダ人ハンス・オフト(72)に聞いたところ、「ボール保持者がヘッドダウンした瞬間に、複数の人間で囲んで正常な判断ができないようパニックを起こさせることです」と教えてくれた。

 ところが久保は3人に囲まれたにもかかわらず、慌てることなく冷静に周囲の状況を判断。プレスをかいくぐるとフリーで寄ってきた大迫にパスを出した。並みの18歳にできるプレーではない。

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