菅は安倍の腰巾着だ――元後見人「ハマのドン」が語る横浜カジノ反対

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安倍の腰巾着

 加えて、菅氏を巡る“事情”の変化もあったのかもしれない。戦後最長の安倍政権下、それを支える菅氏も在職期間歴代1位の大官房長官に。「令和おじさん」効果で、ポスト安倍No.1とも目されるようになった。この秋には、カジノ開業地選定の具体的作業が始まる。立候補へのデッドラインが迫る中、古い後見人なんて……という側面もあったのか。

 この点、当の藤木氏に聞いてみると、

「邪推はやめてくれ」

 と一笑に付すのだが、菅氏のことを振ると、

「官房長官になっちゃったからね。昨日まで一緒にお茶飲んだり、ところてん食ってた間柄だったのが、ヘッポコ市会議員から国会議員、官房長官となった。だから、昔を知ってた連中からすれば、“権力ボケ”と見られちゃうわけ……」

 と思いがにじみ出る。

「菅が官房長官になったあたりかな。横浜港のポートチャージが他より高いという問題があって、俺が何とかしようと動いた。で、菅に“高いんだよ”と言うと、“そうですか”と。で、調べて熱心にやってくれた。“会長、あれはこういうことで、こうなりそうで”“悪いなあ、菅君、こんなことでごめんな”って話は何度したかわからない。週に2~3回は本人から電話がかかってきたかな」

 もっとも、

「菅だって可哀相だよ」

 とフォローも忘れないのが藤木氏だ。

「安倍みたいなのにくっついてちゃ。菅は安倍の腰巾着だ。その安倍はトランプの腰巾着……。トランプとカジノ業者が火元だってわかるんだよ。菅もとばっちり、俺もとばっちり。横浜の人はみんなとばっちりを受けているんだよ。4年前かな、菅に“20分でいいから議員会館に来てくれ”と言われて、行ったらカジノについて説明されたことがある。その時に“あんたのところにたくさん来ているでしょ、人が”って聞いたら“いやいや来ていません”と。だからね、この話は下から来ているんじゃないと思った。上から来ているんだよ。アメリカからね」

 そして、

「いま、菅の頭の中にあるのは、地方自治体の経済への貢献とか、観光立国ではない。理屈と絆創膏はどこでもくっつくんだよ。観光立国なら何でも一緒じゃないですか。横浜なんていま客船がバカバカ入っているんだから、いまさらカジノにお世話になる必要はない、これは国の安全保障の問題で、アメリカとの関係が菅の念頭にあるんだと思う」

 当の菅氏にこれらの発言について見解を求めたが、「回答いたしかねます」とのことだった。

 とまれ、カジノ誘致を決めた横浜市。賽は投げられた。今後、会長はどうするのか。

「もちろん許さないよ。歳も歳だし、殺されようが何しようが俺は反対で死んでいく。とにかく横浜の港ではダメだ。埠頭で汗を流し、死んだ人間もいるんだから。数えきれないほどの人が死んでいるこの場所で、ブランデー飲みながら博打打たれちゃたまんねえ、ってこと。俺は一人になっても最後までやるよ」

 菅氏にとってはキツイ89歳の遺言。自らの表も裏も知り尽くす恩人だけに、さしもの大官房長官も対応に苦慮すること、必定なのである。

週刊新潮 2019年9月5日号掲載

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