桐生祥秀が「9秒台」を叩き出したスタジアムで異例の陸上競技大会開催

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 異例ずくめの陸上競技大会だった。

 17日に行われた「第1回アスリート・ナイトゲームズ・イン福井」。男子走り幅跳びで橋岡優輝(20)が8メートル32を跳んで27年ぶりに日本記録を更新。するとその40分後、城山正太郎(24)が8メートル40を跳びあっさり記録を塗り替えた。

 これだけでも十分珍事だが、この日は男子110メートル障害で高山峻野(24)が13秒25の日本新記録で優勝し、女子100メートル障害でも寺田明日香(29)が日本記録に並ぶ13秒00をマーク。一晩で三つの日本新と一つの日本タイが生まれたのだ。

 会場となった福井県営陸上競技場の愛称は「9・98スタジアム」。かの桐生祥秀(23)が2017年、日本人初の100メートル9秒台を樹立した日本インカレが開催された場所である。

「あの桐生選手の快走が無ければ、そもそもこの大会はありませんでした」

 と振り返るのは、大会を主催した福井陸上競技協会の木原靖之専務理事。

「あのとき、満員のお客さんが大喜びするのを目の当たりにして、“陸上の試合でこんなに人を幸せにできるんだ”と気付かされたんです。それがこの大会を始めるスタートでした」

 資金集めからユニークだった。ネット上の募金活動である“クラウドファンディング”で調達したのだ。しかも、当初目標金額の150万円を大幅に上回る785万円が集まった。

「おかげさまで15人の予定だった招待選手は50人以上に増え、賞金も1着20万円から50万円にアップできました」

 ちなみに、桐生も今大会の100メートルに出場し、10秒05で1着だった。

 大会の雰囲気も、観客参加イベントがあったり、音楽が流れたりと独特だ。

「ヨーロッパの試合はお客さんも楽しめて、選手もテンションが上がるそうです。我々もユーチューブを見たり、選手の助言を聞いたりして演出を研究しました」

 来年以降もクラウドファンディングで大会を続けていきたいとのこと。さて、次はいくら集まるか。

週刊新潮 2019年8月29日号掲載

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