「すぐに検索」やめてみる、「ナビ」になるべく頼らない…スマホ認知症を防ぐ10の心得

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スマホ漬けの脳

「依存」や「中毒」とまでいかなくても、片時もスマホを放せないなら要注意。情報を過剰に摂取する現代人は、脳がカロリーオーバーを起こして、「情報生活習慣病」を発症するリスクがあると奥村氏は指摘する。

「いつ症状が出てもおかしくないと不安を抱える方には、『10の心得』をお伝えしています。これらはすべて、私が『スマホ認知症』の患者さんを治療して実際に効果を上げたものばかり。実践すれば、だんだん脳の働き具合がよくなってくるでしょう。そのファーストステップは、とにかく脳を休ませることです。脳細胞は睡眠によって修復されますからきちんと眠る。そのためには就寝1時間前にはスマホを断つ。寝ながらスマホなどは以ての外ですよ」

 昼間でもスマホやタブレット、パソコンなどのIT機器を使うのは極力控え、浮いた時間はひなたぼっこや散歩など、ゆったりとした時間を過ごすとよい。猛暑で外出が難しい状況であればスマホを見ない環境に身を置き、1日5分でいいからボーッとする時間を作る。いつもとは違う時間の流れを感じられるようにするのが重要なんだとか。

「スマホやパソコンがなくても大して支障はないと分かることで、心身共に少し余裕が出てきます。その余裕こそ脳の疲れがとれてきた証拠です。“スマホをチェックしなきゃ”という気持ちから解放され、脳に疲れを溜めない習慣をつけましょう。サラリーマンなら、仕事などでいくつものタスク(事案)をこなすのがカッコイイと思われがちですが、マルチタスクは脳を疲れさせる要因でしかない。そんなことでは人間の脳のキャパシティーはすぐにいっぱいになって、もの忘れやうっかりミスを重ねるだけ。ひとつの物事に集中するモノタスクに切り替えることが大事です」(同)

 旅に出掛け、スマホに頼る人も多いだろう。旅先で美味しい店を探したり、ナビを使ったり……という作業もこの際、やめることを奥村氏は勧める。

「確かにスマホの検索機能や道案内は便利ですから、知らない街でネットに頼らなければ、道に迷うなど想定外の出来事が増えるでしょう。絶対に使うなとは言いませんが、苦労した分、自分の頭でハプニングに対処する能力が鍛えられます。脳は骨や筋肉と一緒で、使わないと劣化します。分からないことがあるとすぐスマホに飛びつく癖がついてはいませんか。例えば漢字も普段から手で書く習慣がないと、どんどん忘れていく。簡単な字なのに思い出せず、スマホ検索のお世話になれば脳の記憶する力は衰える一方なのです」

 先を急ぐ旅でなければ、自分の嗅覚を頼りに店を探すことで、スマホ漬けの脳が活性化されるというのだ。

「そもそもスマホは、ディスプレイ上で情報のやり取りをするので、視覚だけが刺激され脳のバランスが偏り、結果的に疲労が溜まります。人間は嗅覚、聴覚、触覚など五感が刺激される体験を積むことで、心身の機能が向上してきました。ですからスマホを介さず人と直接会って話せば、表情や声からその人の息遣いを感じられますし、物にしても書店で本を手に取れば、紙の手触りやインクの匂いなどを実感できる。日頃からなるべくリアルな世界に身を置き、五感を活性化させれば脳に疲れが溜まらない。そんな暮らしを心掛けることが大切です」

 たまの休みはスマホの電源をOFFにして、本を片手に途中下車。検索機能に頼らずぶらりと街を歩いてみては如何だろう。

週刊新潮 2019年8月15・22日号掲載

特集「『スマホ』が危ない! 高齢者と子どもを蝕む『脳の病』」より

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