26本塁打、広島・バティスタが「ドーピング」で登録抹消、問われる球団の“隠ぺい体質”

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 夏休みも終わりに近づいた8月20日、東京ヤクルトスワローズとの3連戦で賑わう広島カープの本拠地マツダスタジアムのグッズショップで、“ある異変”が起こった。

 今季チームトップの26本塁打を記録しているサビエル・バティスタ外野手の関連グッズが見当たらない。背番号「95」のレプリカユニフォームをはじめ、Tシャツやサインボールなど、関連商品が全て撤去されていたのだ。バティスタは17日に一軍登録を抹消されていた。理由はドーピング検査で陽性反応が出たためで、日本野球機構(NPB)の発表と同時に球団が決断した。これに伴い、スタジアム内にあるグッズショップから、バティスタ・グッズが消えることになった。

 NPBのドーピング検査は、セ・パ両リーグの公式戦で無作為に対象試合を指定して行われる。プレーボールの1時間前までに両チームに通告し、5回終了後にチーム関係者がくじを引き、ベンチ入りした選手から検査を受ける選手が決まる。試合後に医師の立ち会いのもと、採尿もしくは採血を行い、7日以内に使用した薬やサプリメントを申告する。

 1度の検査で採取した尿や血液は、A、Bと二つに分けて保管される。バティスタは6月初旬に行われた検査で、A検体から陽性反応が検出された。その後、バティスタ側の要求によりB検体の再検査が行われたが、8月16日午後に陽性が確定し、17日の発表に至った。

 広島のマスコミ関係者が事件の経緯を振り返る。

「17日の午後、球団から一枚のファックスが届きました。内容はバティスタのドーピング検査の結果と、登録抹消について。わずか四行の文面で、詳細に関しては調査委員会の制裁を待ち、発表するとだけ記してありました」

 NPBの発表、広島球団のリリースのいずれにも、禁止薬物の種類は発表されていなかった。ドーピング違反の選手は、薬物の種類や摂取の経緯などにより、けん責、もしくは出場資格停止の制裁が決まる。過去の事例では、検出された禁止薬物や制裁内容は、全てが決定した後にNPBが発表していたが、今回は広島球団の意向により、異例の再検査結果の段階での発表になったという。

 前出の関係者が続ける。

「球団としては、この一連の経緯が明かされないまま、バティスタが登録抹消となれば、良からぬ憶測も呼びかねないため、発表に踏み切ったようです。ただ、6月の検査で陽性反応が出た選手を、そのまま一軍で起用し続けたことを問題視する声もあります」

 事実、今季の広島の成績には、バティスタの打撃が大きく影響している。リーグ4連覇が期待されながら、開幕ダッシュに失敗した4月は最下位になるなど、下位に低迷。しかし、5月に20勝4敗1分と驚異的な勝率で一気に首位に浮上した。バティスタの5月月間成績は打率.352、10本塁打、21打点の大活躍だった。

 交流戦の惨敗で大きく負け越した6月は、バティスタも月間打率.247と不調で打順も下位に降格したが、9連勝で再び首位争いに浮上したオールスター後は3番に戻り8本塁打と、バティスタの打棒とチーム成績は見事に連動している。

「FA移籍した丸佳浩が昨年まで打っていた3番にバティスタが定着したことが、チームの快進撃の原動力になったことは間違いありません。極度の不振で1番を外れた田中広輔の代役としてトップバッターに定着した西川龍馬とともに、今年の打線のキーマンと言えるでしょう」(広島担当記者)

 NPBのアンチドーピング規定では、陽性反応が出た選手には発覚から10日以内に弁明の機会が設けられ、バティスタも弁明を希望したと言われている。弁明後は20日以内に調査裁定委員会を開き、処分が決まることになるが、24日現在、16日の発覚以後の動きは明らかになっていない。

 NPBが2007年にドーピング検査を本格導入して以来、違反が明らかになったのは6人。うち5人が外国人選手で、唯一の日本人選手である2011年の井端弘和内野手(中日、所属は当時)は、目の治療薬の申告期限切れと判断され、けん責処分と始末書の提出、中日球団に制裁金300万円が科された。その他5人の外国人選手は、今年6月に発覚したジョーイ・メネセス内野手(オリックス、同)が1年間の出場停止処分で契約解除になるなど、全て出場停止処分になっている。

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