スマホアプリに受け継がれ今も増え続ける「出会い系サイト事件」 17年前、塩釜港で発見された女子高生

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94%が少女からの誘い

 菅原容疑者は、愛美さんの遺体が発見された後も、彼女の携帯電話を使って出会い系サイトに接続、別の女性と会う約束をするなど、ナンパを繰り返していた。警察はその携帯に女性になりすましてメールを入れ、菅原を待ち合わせ場所のホテルに誘い出して、逮捕した。
 
 菅原容疑者は取り調べでは犯行を認めていたが、その後否認に転じ、「(愛美さんに)会っていたのは事実だが、殺してはいない。仙台市内で突然車を降りて逃げて行った。その後は知らない」との主張を、公判が始まってから続けている。検察側によると、菅原容疑者は7月24日の夜、携帯電話の出会い系サイトの掲示板で交際相手を求める愛美さんを知り、連絡を取って落ち合い、多賀城市内のレストランで食事をした後、仙台市内のホテルへ行った。25日の未明にホテルを出たが、菅原容疑者が金を払わなかったため、愛美さんは電話で友人に「まだお金をもらっていない」などの話をしたという。
 
 菅原容疑者が愛美さんを、いつどこでどのように殺害したかは特定されていない。時間は「7月25日午前2時41分以降、7月末までの間」とされている。いずれにしても金銭トラブルが原因で、仙台市周辺に止めたワゴン車内などで、首を絞めるか鼻や口をふさぐかして窒息死させ、遺体を塩釜港に捨てたと、検察側は主張している。

 26日には、菅原容疑者は愛美さんになりすまし、母親の携帯電話に「知り合いと秋田に遊びに来ちゃった」とメール送信。心配している友人にも、「勝手に殺さないでくれる」などと送信した。まさに顔の見えないメールを悪用したアリバイ工作だった。
 
 2006年3月、仙台地裁の第一審判決では、「被告の車から被害者のDNAや血痕や尿の跡が検出された」「被害者と金銭トラブルがあった」「被害者を装い携帯電話からメールした」などの事実から、自白がなくても死体遺棄と殺人の認定に疑いはないとして、懲役18年の実刑判決を言い渡した。
 
 菅原被告は控訴したが、2007年4月に仙台高裁も、第一審の判決を支持して控訴を棄却。「否認と自白を繰り返して反省の言葉もなく刑事責任は重大」と、菅原被告の主張を切り捨てた。

「出会い系サイト規制法」が施行されたのは、この事件の翌年2003年9月である。2002年から出会い系サイトをめぐる事件が激増していた。

 警察庁によると2002年の上半期、出会い系サイトに関連した検挙事件は793件で、前年同期の2・6倍に増えていた。そのうち半数の約400件は児童買春事件で、被害者の半数は女子高校生、4人に1人は女子中学生だった。しかもこの児童買春事件の中で、全体の約94%が少女の側からの勧誘で、金銭の支払いを条件に、いわゆる“援助交際”を求めるものだった。

「出会い系サイト規制法」は、18歳未満の子どもを性行為に誘ったり、金銭と引き換えに交際に誘う書き込みをすることを禁止、違反すると100万円以下の罰金を科すというものだ。また、性交渉や交際を誘った子どもの側も罰せられる(家庭裁判所に送られ、保護処分になる)。だがこの規制法、一定の抑止力にはなるが、どこまで実効力を持つのかは疑わしい。その後も露骨な誘い文句をカモフラージュする隠語が出回るなど、出会い系サイトを利用した犯罪は続き、今なお後を絶たないのが現状だからだ。

 安易な出会いのチャンスは、男女間のさまざまな犯罪を容易に生んでしまう。
 
 2001年4月には、北海道出身で、高校を卒業したばかりの18歳の少年が、在校時にネットで知り合い、交際していた、茨城県在住の主婦(28)を刺殺して逮捕された。二人は少年の親から関係をとがめられ、一度、別れていたが、少年が主婦を忘れられず、茨城県まで転居。彼女に同居を求めたが、拒まれたため、逆上して凶行に及んだという。
 
 同年同月にはフリーターの男がメル友の京都の女子大生(19)を殺して宇治川に遺棄した。7月には出会い系サイトで知り合った元風俗店勤務の女性(19)と金銭トラブルになった埼玉県の県立高校教諭(37)が、女性の知り合いの暴力団員に監禁され殺害された。
 
 2002年3月には、鳥取県の元建設作業員(32)が携帯サイトで知り合った女性から金を騙し取り、殺害している。同年7月には和歌山で、女が男性の声色を使って携帯電話で女性に交際を迫り、その気にさせて金品を奪い殺害する奇怪な事件も起きた。
  
 その後も、出会い系サイトに絡む事件は後を絶たなかった。出会いの時点で匿名性が高いためか、出会い系サイトに関係する事件は、あまりにも短絡的で身勝手なのが特徴だ。共通しているのは、犯行の動機が希薄なこと。今はアプリに形を変えて“出会い系”は存続している。縁もゆかりもなく、出会うはずのない人間が簡単に出会ってしまえるシステムが、こうした陰惨な事件を生み続けている。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月17日掲載

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