日本でも注目の「韓国のフェミニズム」 “男性嫌悪テロ”も起きて男女の間に根深い亀裂

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警察沙汰になった「ミラーリング」

 男性たちの間では00年代中頃から、若い女性を「身のほど知らずな高望みをしているバカな女」といったニュアンスで嘲弄する言説が、ネットでもてはやされてきた。そうしたミソジニー的な傾向をより先鋭化したのが、保守主義を掲げるコミュニティサイト「イルベ」だ。イルベユーザは江南駅殺人事件に際しても、江南駅出口に「男性だからという理由で死んだ韓国軍兵士を追悼しましょう」といった趣旨の花輪を届けて、物議を醸したことがある。新自由主義的な競争社会が無数の敗者を生み続けるなか、不安に苛まれた男性がミソジニーに自我の安定を求めている…というのが、そのもっぱらの分析だ。

 一方こうした男性層のカウンターパートをなすのが、女性による過激な男性嫌悪コミュニティサイト「ウォマド」。彼女らが掲げる「ミラーリング」は、女性が男性にされてきたことをそっくりお返ししようというコンセプトだ。

 ウォマドの開設は2016年。同年に「コーヒーに不凍液を混ぜて男性に飲ませた」などの書き込みで、警察が捜査に乗り出したことがある。2017年には「オーストラリアで男児に性的暴行をした」との書き込みから、11月に27歳の韓国人女性が地元警察に逮捕された。被害事実は確認されなかったが、女性は韓国に送還されている。2018年には男性ヌードモデルの盗撮画像がウォマドで流布され、撮影・投稿した25歳の女性が懲役10ヶ月の実刑判決を受けた。

 ウォマドにはそのほか男性トイレの盗撮画像なども投稿されており、司法当局は運営者に対しわいせつ物流布幇助の容疑で逮捕状を発行。だが運営者は海外在住ともいわれ、まだ摘発に至っていない。

 ウォマドは多くのフェミニストからも迷惑がられているが、その捜査や摘発は女性差別だという議論もある。男性による盗撮サイトは多くが野放しになっているのに、女性が同じことをやると警察はすぐ目の色を変えて捕まえようとする…というのがそのロジックだ。

 昨年5月からは、そうした警察の「偏った捜査」を糾弾する女性団体の大規模なデモがたびたび開催されてきた。一方でまた男子大学生がその集会場にBB弾(エアガン)を撃ち込んで今年6月に罰金刑を受けるなど、オフラインでの衝突も顕在化している。

 儒教社会が急速に近代化していく陰で、根深い亀裂を生んだ韓国の男女問題。和解の日が訪れる気配は、まだ一向に見えない。

高月靖/ノンフィクション・ライター

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月15日掲載

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