日本でも注目の「韓国のフェミニズム」 “男性嫌悪テロ”も起きて男女の間に根深い亀裂

国際 韓国・北朝鮮 2019年8月15日掲載

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「ミソジニー殺人」から#MeTooへ

 儒教を国是としたかつての朝鮮では父系の血統が何より重視された反面、女性が虐げられてきた歴史がある。近現代の文学や映画でも女性の悲惨な境遇をテーマにした作品は多く、暗澹とした筋書きに気が滅入るほどだ。急速に近代化した60~80年代を通じても古い因習や価値観の一部が受け継がれ、社会に影を落としてきた。

 そうしたなかで女性運動が根づき出したのは、韓国社会が豊かさを享受し始めた80年代のことだ。運動を通じてようやく女性への性暴力や戸主制度などの問題が争点化され、90年代以後の法整備や行政の対応につながっていった。やがて90年代末~00年代初頭にかけて、ネットを活動の場とするフェミニスト層が台頭。そして現在、20~30代女性の新しい層がオンラインからオフラインへ溢れ出している状況だ。

 特にその大きな転機となったのが「江南駅殺人事件」。これは2016年5月、地下鉄江南駅近くの公衆トイレで23歳(当時、以下同)の女性が面識のない男に刺殺された事件だ。

 犯人は34歳の飲食店従業員。「日頃から女性に無視されてきたのが耐え切れなかった」と供述したことから、ミソジニー(女性嫌悪)に基づく無差別殺人として韓国人女性を震え上がらせた。現場からすぐの江南駅出口は献花や追悼メッセージを記した付箋で溢れ返り、女性らによる追悼集会が開かれてもいる。一方で警察が「精神疾患に関連した通り魔事件」との認識を示したことから、「ミソジニー問題を矮小化している」との反発も招いた。

 また2018年1月には44歳の女性検事が、入庁以来続いてきた上司らによるセクハラをテレビで告発。これを機に韓国で#MeToo運動が一気に拡大し、文壇を代表する詩人、著名な映画監督や演出家、政治家らが告発を受けた。同年3月にはベテラン俳優が数々の証言に追い込まれ、謝罪文を公表した後に自ら命を絶っている。

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