里見香奈五冠、女性初プロの偉業に王手もむしろ収入激減の不可解

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 ひと口にプロと言っても、将棋界では男女の差があまりに大きい。プロと名乗れるのは四段からで、プロ棋士の肩書を持つ女性は一人もおらず、“女流プロ”という枠組みが設けられている。目下、女性初のプロ棋士誕生の偉業に王手をかけているのが、女流棋士の里見香奈五冠(27)だ。

 プロになるには、まずプロ棋士養成機関「奨励会」に入会して三段リーグを突破するか、編入試験に合格する必要がある。

「今の勢いなら、里見さんは編入試験に合格するでしょう」

 と、ある現役棋士が語る。

「里見さんは奨励会に在籍していましたが、昨年2月に年齢制限を理由に退会を余儀なくされています。その後、“編入試験は受験しない”と公言していたものの、期待するファンの声も後押しになり、最近は心境の変化があるようです」

 編入試験の受験資格は公式戦で10勝、かつその間の勝率が6割5分以上と定められている。里見五冠は7月27日、叡王戦予選で黒田尭之四段(22)に勝利して10勝目を挙げ、公表ベースでは勝率が6割6分7厘と要件を満たしている。

 今後、編入試験を受験した場合、5人の若手四段棋士と対局して勝ち越せば晴れて偉業達成となるのだ。ベテラン観戦記者が今後を占う。

「プロになった後、里見さんが苦労するのは将棋より経済面ではないでしょうか」

 日本将棋連盟が今年2月に公表した「2018年獲得賞金・対局料ベスト10」では、1位は羽生善治九段(48)の7552万円。女流1位は里見五冠だが、

「里見さんは2年連続7回目のトップですが、金額は公表されていません。プロのタイトル料最高額は竜王戦の4320万円。一方、女流は今年から始まったヒューリック杯清麗戦の700万円とその差は歴然としています」(同)

 昨年、里見五冠が獲得した賞金額を試算すると約1300万円。それに対局料などを加えると、年収は2千万円を下らない計算だ。先の棋士が心配顔でこう語る。

「プロ棋士の世界は、層が厚く争いも熾烈。年収300万円に届かない棋士もざらにいます。里見さんが女性初のプロ棋士になっても、年収が激減するのは間違いありません」

 名誉か、それとも安定か。

週刊新潮 2019年8月8日号掲載

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