韓国株・為替ともに急落 日韓経済戦争の「戦犯」文在寅に保守から「やめろ」コール

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おカネが逃げ始めた

――本当に、墓穴を掘っていますね。

鈴置: そんな「危ない」国からはおカネが逃げ出します。「ホワイト国(Aグループ)の適用除外」が決まった8月2日、KOSPI(韓国総合株価指数)は前日比19・21ポイント安の1998・13と、心理的抵抗線の2000を割りました。

 週明けの8月5日も続落。51・15ポイントも下げ1946・98で引けました。毎日経済新聞は「通貨危機の悪夢が浮上」(韓国語版)との見出しで急落を報じました。

 ウォンも売られました。 8月2日の終値は9・5ウォン安の1ドル=1198・00ウォン。その流れを引き継ぎ、8月5日には「防衛線」と見なされた1200ウォンをあっさり突破、17・15ウォン安の1215・15ウォンを付けました。

 韓国は2008年と2011年の通貨危機の際、日本、米国、中国から通貨スワップを結んでもらい――つまり、ドルを借りてしのぎました。

 今は、日本はもちろん米国や中国とも関係が悪化しています。韓国は通貨面でも孤立無援と市場は見なしています。

――韓国紙は「中国との間で通貨スワップを結んでいる」と書いています。

鈴置: 韓国銀行は中国との通貨スワップを延長したと主張していますが、中国の金融当局はそれを確認していません。記者団の質問にも「韓国に聞け」と言うだけです。

 韓銀のホームページにも、本来は載るはずの「延長のお知らせ」が出ていないのです。市場は「中韓スワップ」の存在に極めて懐疑的です。

経済が悪化しようと和解しない

――では、韓国は日本に白旗を掲げるのですか。

鈴置: 今の段階で、その可能性はまずありません。「日本に勝つ」と宣言した以上、文在寅政権は白旗を掲げるわけにはいかないからです。

 この政権は50%前後の比較的高い支持率を誇っている。その自信からも、また、支持者をつなぎとめるためにも、日本にスワップなど求めず、徹底的に戦うでしょう。

――韓国の左派は通貨危機の危険性に気づかないのでしょうか?

鈴置:左派の中にも分かっている人はいます。でも、それを言い出すと「日本に譲歩してスワップを結んでもらおう」という方向に話が進みかねない。

 ハンギョレの社説「ついに“破局”を選んだ安倍、“国家力量”総結集し対抗しよう」が「『経済に打撃が大きいから、どうにか和解しよう』という方式で安易に軋轢を縫合してはならない」と書いています。そうした空気が生まれるのを阻止する狙いでしょう。

奈落の底に落ちて行く

――結局、韓国はどうなるのでしょうか。

鈴置: 通貨危機に向け、ひた走る可能性が増しました。1997年の通貨危機のデジャヴです。韓国は当時も外交的に孤立し、危機に直面しても誰からも助けてもらえなかったのです(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。

 保守系紙の読者コメントからも「1997年の再現だ。通貨危機に陥る」との悲鳴が聞こえてきます。しかし、そうした声は「表」では語られません。その結果、韓国はずるずると奈落の底に落ちて行くのだと思います。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月5日掲載

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