神戸6歳女児「わいせつ殺害犯」が死刑破棄…「裁判員裁判は何のため?」遺族語る

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昏い欲望

 最高裁の決定後、遺族は次のようなコメントを発表した。

〈娘の事件について、裁判員裁判では、被告には死刑が相当であるとご判断いただきました。私たち遺族は、その判断は正当なものであったと今でも確信しています。(中略)裁判員裁判では、長い時間をかけて審理して、被告に直接質問をして、被告の犯した犯罪の悪質さや被害の重大さを正面から捉えていただきました。そのような判断を、高等裁判所や最高裁判所が覆してしまったのは納得がいきません。裁判官は、前例を大事にしているだけで、1人の命の重さを理解していただいていないとしか思えません。亡くなったのが1人であれば死刑にならないという前例は、おかしいと思います。(中略)そのような前例だけで判断して、命の重さを直視しないのであれば、何のために裁判員裁判をしたのかと思います〉

 最高裁の決定では、殺害の計画性が認められないことなどを理由に、〈被告人の生命軽視の姿勢は明らかではあるが、甚だしく顕著であるとまでいうことはできない〉としている。

 この判断が誤りであることを示すため、吐き気を催すような君野の所業を振り返っておきたい。

 君野が小学1年の生田美玲ちゃんに声をかけ、神戸市内の自宅に連れ帰ったのは、本人の供述によれば、「女の子の体に興味があり、殺して触りたかった」から。絵のモデルになって欲しい、という誘い文句を信じて疑わなかったであろう美玲ちゃんはビニールロープで首を絞められた上、首の後ろの部分を4回以上包丁で刺され、殺された。

 小さな遺体を前にした君野は、昏(くら)い欲望を剥きだしにした。

〈死体に対する関心や性的欲求の満足のため、前記包丁(殺害時の凶器)を用い、その腹部を切り裂いて内臓を摘出し、身体を頭部、上半身、右脚及び左脚の4つに切断したほか、両乳首付近の皮膚をそぎ取るなど〉(一審判決より)

 した上、これらを複数のビニール袋に入れ、まるでゴミのように捨てたのだ。〈生命軽視の姿勢〉が〈甚だしく顕著である〉ことに疑いの余地はない。

「今回の事件の被告は、わいせつ目的で幼い女児を誘拐して殺しており、一般市民からすれば、それだけで死刑に値すると考えても不思議ではありません。さらに、遺体をバラバラにして遺棄するという非道極まりない行動に鑑みれば、一審の死刑判決は当然です」

 と、語るのは、「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」事務局長の高橋正人氏。

「やはり高裁で死刑判決が破棄され、無期懲役が確定した千葉の女子大生の事件でも、計画性がないことを理由として挙げていました。が、あの事件の犯人は前科2犯で、出所後、わずか2カ月で計8回も強盗や強姦などの罪を犯している。その中で最も重大な犯罪が、女子大生殺害だったのです。結局、市民が見ているのは計画性などではない。犯行前後の行動などから見える残虐性や悪質性なのです」

 現在、最高裁に上告中の「大阪・心斎橋の無差別殺人事件」についても、

「計画性が低いとか、覚せい剤の影響があったという理由で、高裁で死刑判決が破棄されました。一般市民が重要視しているのが計画性だけではない、ということをなぜ裁判官は理解できないのでしょうか」

 と、高橋氏は憤る。

「さらに言えば、計画的に誰かを殺すより、手当り次第、目についた人を殺す人間の方が社会にとってはよほど危険と言えるのではないか。計画殺人は頓挫するかもしれませんが、突然殺そうとする通り魔など、被害者にとっては防ぎようがありませんから」

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