「CoCo壱番屋」がインド進出 「いきなり!ステーキ」、「餃子の王将」の失敗に学ぶ教訓

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「餃子の王将」と「いきなり!ステーキ」の失敗

 日本の“流儀”を持ち込んで海外進出に失敗した代表例と言えば、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスと、「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスのケースだろう。前者は中国、後者はアメリカから撤退に追い込まれた。

「中国は餃子の本場ではありますが、北部が中心で、なおかつ水餃子が一般的。餃子だけを食べ、ご飯を口にする事は極めて稀です。北京など中国北部から日本に来た中国人留学生は『餃子ライス』に驚くそうです。餃子の王将は日本のスタイルを守って05年に中国に進出しますが、業績が悪化して14年に子会社の解散を決定しました」(同・記者)

「いきなり!ステーキ」は、17年にステーキの本場とされるアメリカに上陸。18年にはナスダックに上場を果たして大きく注目された。

「しかし1人客に立ち食いをさせ、価格は安くするという日本で成功したスタイルは、アメリカでは不評でした。椅子を用意し、1人客からグループ客をメインターゲットに変えるなどの路線転換を行いましたが、18年に米国事業の不振から25億円の損失を計上。今年には7店舗を閉鎖し、ナスダックに上場廃止を申請しました」(同・記者)

 現在、日本の外食産業は少子高齢化で顧客の絶対数が減少。デフレ経済の脱却は実現できず、客単価を上げることもままならない状況だ。経営者なら誰でも海外進出は考えるはずである。

「餃子の王将」と「いきなり!ステーキ」の失敗から何を教訓として学び、「CoCo壱番屋」の挑戦のどこに注目すべきか、フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏に訊いた。

「あくまでも一般論ですが、外食産業は1代で会社を急成長させたカリスマ経営者が少なくありません。自社の料理や接客スタイルに絶対的な自信を持ち、海外展開でも現地ニーズを無視する危険性があると思います。お客さんが望むことを無視しては経営が成り立たないというのは商売の基本。お客さんの顔を見ることがいかに大切かということを、『餃子の王将』と『いきなり!ステーキ』の失敗例は教えてくれているのではないでしょうか」

 千葉氏は「海外進出にあたっての理想型は現地法人」と指摘する。餅は餅屋。現地のことを最も知るのは現地の人々だ。日本でのビジネススタイルはあくまでも“原型”であり、進出先の現地経営者が改善していく自由が大切になるという。

「熊本県に本社を置く『味千ラーメン』は中国で700店舗を超える規模の経営をしています。大変に興味深いことですが、最初に設立した台湾の現地法人は過剰なローカライズで失敗してしまうんです。次に『日本の味を大切にしたい』という香港の実業家と組み、その上で現地の自由に任せてリベンジに成功した話は、私たちに様々なことを教えてくれていると思います」(同・千葉氏)

 インド市場に挑戦するCoCo壱番屋は10年代に創業家が経営の中心から去り、15年にハウス食品がTOBを行って連結子会社とした。千葉氏は、ここに着目する。

「CoCo壱番屋がインドに挑戦するということは、ハウス食品と三井物産という日本を代表する企業2社が、『食』という分野で海外の巨大市場に挑戦することを意味します。インドの人口は13億人を超えていますから、『日本式カレー』というニッチな業態が成り立つ可能性もあります。しっかりとした現地調査と、社内のコンセンサスをまとめながら進出するはずです。成功すれば日本の外食産業の閉塞感を破ることになるのは間違いありません」(同・千葉氏)

週刊新潮WEB取材班

週刊新潮 2019年7月22日掲載

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