「CoCo壱番屋」がインド進出 「いきなり!ステーキ」、「餃子の王将」の失敗に学ぶ教訓

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インド人は「日本カレー」を好むか?

 7月8日、カレーチェーン「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋はインドに進出するため、三井物産と共同出資会社を設立したと発表した。2020年初めに、首都ニューデリー周辺に1号店を開く計画だという。

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 近年、外食産業の海外進出に再び脚光が集まっている。牛丼の「松屋」を展開する松屋フーズホールディングスは6月、モスクワにロシアの松屋1号店をオープンしたと発表、多くのメディアが取り上げたことも記憶に新しい。経済担当の記者が解説する。

「背景にあるのが、外国人観光客の急激な増加です。うどんを例に取れば、彼らは日本国内で本物のうどんを食べる。帰国して『日本で食べたうどん、美味しかったからもう1度食べたいね』と思ってくれているので、うどん店を海外に進出させてもリスクが軽減されるという判断です。事実、丸亀製麺さんは、10を超える国と地域に、200店舗以上の海外支店をオープンさせています」

 FujiSankei Business i.は7月8日、「日本食店の海外進出を支援 官民で『質』確保 “本物”提供しブランド向上」の記事を掲載した。農水省の支援を受けた民間企業が、海外展開を円滑に進めるため国内外で外食産業の社員を対象にした研修を実施しているという内容だ。

 文中には「伝説のすた丼屋」などを運営するアントワークスと、「金沢まいもん寿司」を全国展開するエムアンドケイの社員がロシアで研修を受ける様子が紹介されている。

 このような動きが顕著だからこそ、大手メディアはCoCo壱番屋と松屋のケースを大きく取り上げたわけだ。しかしながら、両社の提供する“味”を考えれば、CoCo壱番屋の方がよりチャレンジングだという。

「松屋さんの牛丼は、広い意味で和食の範疇に入ります。ロシアで和食ブームは既に飽和状態という分析もありますが、日本の味を忠実に守ることが、ロシア人への訴求にもつながるのは間違いありません」(同・経済担当記者)

 しかしながら、CoCo壱番屋の場合は「日本化されたカレー」をカレーの本場インドで提供するという。松屋とは全く状況が異なる。

 テレビ朝日が7月9日に電子版で報じた「カレーの『CoCo壱』がインド進出! 本場の評価は…」によると、壱番屋は《「日本のカレーを伝える」「味は基本的に変えない」、手で食べる文化だが「スプーンを用意する」》と日本のスタイルを遵守する考えを明らかにしている。

 インド風のカレーも日本では相当にポピュラーになってきた。ご存知の通り、本場のカレーはスープのようにさらさらしている。

 北インドではナンやチャパティといったパンでカレーを食べる人が少なくない。南インドは米食が中心であり、米はジャポニカ米に似ているとはいう。だが、できるだけ粘らないように炊くなど、やはり相違点は大きい。

 宗教的理由からベジタリアンも多い。インド国内でもポークカレーやビーフカレーを提供する店もあるとは言われているが、豆やマトン、鶏肉のカレーに比べればポピュラーでないのは事実だ。

「CoCo壱番屋が直面するハードルは、寿司を考えれば簡単に理解できます。私たち日本人には回転寿司や街場の個人店、銀座の高級店と様々な選択肢が用意されています。予算や気分を考えて選ぶわけですが、そこに『カルフォルニアロールの専門店』を候補に入れる人は、どれくらいいるでしょうか。今でこそアボカドやマヨネーズを使った寿司ロールは日本でも市民権を得ていますが、カレーの本場、インドで日本式カレーがどこまで通用するかは疑問です。壱番屋は『国内店でインド観光客の評価は高い』と説明していますが……」(同・記者)

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