筋トレ、食生活、サプリ…中高年でも間に合う「若返りホルモン」の増やし方

ドクター新潮 健康 長寿

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ホルモン年齢の測定

 DHEAからも作り出される男性ホルモン、テストステロンについても述べておく。獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科の井手久満准教授によれば、

「テストステロンが減るとLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)、つまり男性の更年期になる。精神症状としては不安や苛立ち、うつ、不眠、集中力や記憶力の低下、性欲の減少、身体症状としては筋力の低下、疲労感、ほてり、頭痛、めまい、性機能低下、頻尿などが現れ、QOL(生活の質)を著しく低下させます。テストステロンが少ない人のほうが、悪性度の高い前立腺がんに罹りやすいというデータもあります」

 テストステロンが減少する原因は、過度の飲酒や睡眠不足、ストレスなどだというが、逆に多ければ、

「骨が強くなり、心筋梗塞のリスクが減り、脂肪が燃焼し、糖尿病を予防できるなどの効果があります」

 増やすには、やはり、

「筋トレをすると増えるという研究結果がある。食事はオクラやアボカド、納豆など、ネバネバしたものがいいとされ、ニンニクや玉ねぎなどユリ科の野菜や、亜鉛を多く含む牡蠣などもいいようです」

 若返りホルモンを増やすトレーニングを実践している、東大大学院の石井直方教授の話も付け足すと、

「ゆっくりとした動きのトレーニングをすれば、成長ホルモンや男性ホルモンは分泌されます。僕は3年前、ステージIVの悪性リンパ腫に罹患しましたが、いまでは元気に仕事ができている。厳しい治療に耐えられる体力が蓄積されていたのだと思います」

 教授は今、64歳である。

 だが、日常の実践だけでは不安だという人は、各地のクリニックで「アンチエイジングドック」を受診するという手もある。

「そこでは血液検査をしてホルモン年齢を測り、標準よりも低い人には薬を処方したりもします。DHEAを摂取するとストレスに強くなったり、風邪をひきにくくなったり、骨密度が改善したりします。ほかにも更年期の女性など、検出可能なレベルまで性ホルモンの量が戻り、肌がきれいになったりします」

 そう語るのは前出の米井教授。銀座上符(うわぶ)メディカルクリニックの上符正志院長はそれを実践している。

「予防医学の観点からは、ホルモンの量が同年齢の平均より上でなければいけません。そのために血液検査で測定し、足りないホルモンを補うのですが、原則的にDHEAから補充します。さまざまなホルモンに変化し、免疫力や細胞の生成力をアップさせ、ストレスに強くし、筋肉の生成を促し、さらには記憶力を高め、性機能を強めるからです」(上符院長)

 ただ、アメリカでは錠剤がサプリメントとして販売されているが、

「日本では薬事法の問題で薬局では買えず、うちのクリニックもアメリカから取り寄せたものを処方しています。錠剤の原料はヤムイモ。保険はききませんがそれほど高価ではありません。うちの総合ホルモンバランス検査は血液から約12のホルモンバランスを測り、検査の前後に2時間程度のカウンセリングをして2万6500円。DHEAの錠剤が4カ月分120錠で1万2200円です。年齢のせいで趣味のサッカーやサーフィンができなくなったのが、DHEAの体内量を増やしてから再開できた、という人はたくさんいます」

 ただし、蛇足かもしれないが、内科医で常葉大学健康科学部長の久保明氏は、

「まだまだ発展途上の分野ですから、単純に“これで元気になる”という話ではない。老化によって落ちてしまったQOLを上げたければ、成長ホルモンやDHEAの量をきちんと測ったうえで、専門医に相談することから始めましょう」

 と警鐘を鳴らす。医師の処方もなく、米国の錠剤をネット通販などで手に入れ、若返るはずが、副作用に苦しむ、という愚は避けたい。

週刊新潮 2019年7月18日号掲載

特集「中高年でも間に合うという『若返りホルモン』の増やし方」より

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