巨人の独走を支える「桜井俊貴」、今一番注意すべきことは?【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人が完全に独走態勢に入った。前半戦を終えて48勝31敗1分、2位・阪神に9・5ゲーム差を付けている。交流戦前は3位で首位・広島に4・5ゲーム差だったことを考えると、すごいの一語。早ければ18日にも優勝マジックが点灯するという。

 まあ、どこからどう見ても、よっぽどのことがない限り、“安全圏”だ。

 交流戦からチーム状況がよくなった。接戦をものにしているのがいい。打線は坂本勇人、丸佳浩を中心に大城卓三が5番を任せられるようになり、若林晃弘、重信慎之介、増田大輝らの台頭があった。

 投手陣も先発では菅野智之、山口俊、クリストファー・メルセデスの3本柱に4年目の桜井俊貴、今村信貴と充実してきた。後半戦はこの5人が中心になる。

 大きいのは桜井の成長だ。交流戦から先発のチャンスをもらって期待に応えた。彼はドラフト1位で、チームとすればなんとしても使いたいところだった。

 でも、入団して2年間、マウンド上で自信なさげでオドオドしている印象があった。新人時代のことを引きずっていたのかもしれない。〈注1〉昨年は1軍実績なしだ。

 でも環境が変わった今季は目の色が違うし、気迫が伝わってくる。結果を残せるようになって自信も感じられる。球威があるし、1軍の試合を重ね、こなれてきた。

 投手は野手と違って、なにか1つのきっかけがあれば変わる。私は打者に対しての攻める気持ちを持ったことだと思う。

 それに若手投手陣の「オレもオレも」という相乗効果があったのではないか。中川皓太にしても最初は6、7回あたりを任せられ、次は8回をこなし、いまでは抑えの役割を担っている。

 新人・高橋優貴も一時は活躍した。こうなると同世代の今村、田口麗斗、鍬原拓也らが刺激を受ける。他の若手だけではなく、投手陣全体競争意識が出る。

 原監督はファームから1軍に引き上げるとすぐに使う。やりがいがある。桜井の先発(6月6日・楽天戦)は抜てきだった。「オレだって」の強い気持ちがあったと思う。

 桜井が注意するのは四球だ。投手だれにも言えることだが、四球はベンチが一番嫌がる。守っている野手もリズムが崩れる。ことに桜井は売り出し中で、いまが一番大事な時期だ。とにかくベンチの信頼を裏切らないことだ。

 目標は6回を投げたら「1個」、7回なら「2個」だ。四球を出すなら、まだ打たれた方がいい。打者は10回打席に立てば2本、3本は打つ。それよりもコースを狙い過ぎてボールを先行させて歩かせる。何度も言うがこれが一番ダメだ。攻めの投球でマウンドに立つ。できれば無四球試合を目指してほしい。

 それにしても巨人、今季の優勝にかける思いは現場、フロントともかなりのものだ。新外国人、ルビー・デラロサを獲ったと思ったら日本ハムから交換トレードで藤岡貴裕、鍵谷陽平の2投手を獲得した。今度は楽天との交換トレードで古川侑利投手を獲得した。

 藤岡、鍵谷の2人は中継ぎ要員で古川は先発要員だ。昨年はリリーフ陣の負けが20あったし、今年も12ある。原監督、この負けが相当頭にあるようで、本格的な夏場を迎えて中継ぎ陣とともに先発陣の一層の充実を図ったのだろう。危機管理の徹底だ。

 桜井、後半戦の開幕となる15日のヤクルト戦(長野)で中5日の先発が有力だ。是非、無四球試合を達成してもらいたい。

 〈注1〉新人時代の16年・8月25日、東大とのプロ・大学交流戦で先発して6回をまさかの7失点(自責4)、東大相手の結果に衝撃が広がった。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月13日掲載

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