暴力団への「闇営業」でメシが食えた元吉本芸人の懺悔録

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実質、黙認

 前田は山口組の田岡一雄3代目組長の息子と友人だったことで、直の仕事を回してもらっていたという。

「彼からの仕事かどうかは憶えてへんけど、一度、警察を怒らせたことがあんねん。吉本の当時の社長の中邨(なかむら)秀雄さんに呼ばれて、みんなの前で“お前ええ加減にせいよ”と怒られた。でも、あとから“あんまりヤクザの仕事、受け過ぎんように”と言い含められました。みんなの手前、注意はするけど、実質、黙認していた、いうことですわ。でも芸人はこうやって食いつないできたんです。それが続いてきたことで、今回、芸人が処分されるようなことになったのかもしれません」

 たしかに時代は変わった。むろん、反社会的勢力と知ったうえでの関係は断つべきだろう。とはいえ、反社会的勢力と気づかずに営業の現場に出向いてしまったケースは気の毒ではあるまいか。その点を、『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。』など、暴力団関係の著書があるノンフィクション作家の廣末登氏が解説する。

「今回の一件を受けて、反社会的勢力との付き合いをなくすべきという声が多数ですが、私は現実的ではないと思います。反社会的勢力は暴力団排除条例の影響もあって見た目だけでは判断しづらくなっています。いまはグレーゾーンが以前よりも広くなっていますし、相手がそういう人間であることのチェックが警察ですら難しいのです。反社会的勢力には必ず周辺者がいますし、警察が分からないものを素人が判別しろというのは無理な話でしょう」

 そんな相手が「闇営業」「直の営業」の先にいるのが現代なのだ。評論家の徳岡孝夫氏はこんな見方だ。

「反社会的勢力がみんなバッジでもつけていてくれたら別ですけれど、そうもいきませんからね。問題になっている芸人は謹慎だとか番組降板だとか、表舞台から抹消されそうな勢いで罰せられています。でも、ほかの業界にも、なんぼでもいるんじゃないですか」

 たとえば、政治家。

「政治資金パーティーなどで知らないうちに暴力団の人とツーショットを撮られ、それが報じられることもあります。それで政治生命が絶たれて辞任するかといったら、そうはなりません。曖昧にしたまま仕事を続けることがほとんどです。そういった意味で、今回報じられた芸人だけがいきなり表舞台から抹消されるのはやはり立場が弱いから。不憫な気がしますね。それと、会社を通さない営業すべてをダメだと言っていたら芸人さんは食べていけない。窮屈な世の中ですよ」

 泉下の月亭可朝に、膝を叩くようなうまい解決策を問うてみたいものだ。

週刊新潮 2019年7月11日号掲載

特集「とうとう『さんま』が後輩に助け舟! そんなに悪いか『吉本の闇営業』」より

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