安倍外交の深謀遠慮 G20“夕食会”の席次から読み取れる「対中包囲網」

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日米印サミットという成果

 今回のサミットでの語られざる成果は、日米印サミットだ。椅子を馬蹄形(外務省ではU字の配席をこう呼ぶ)に並べて3人の首脳は親密に語り合った。昨年11月、アルゼンチン・ブエノスアイレスでのG20で初めて開催されたが、国境紛争を抱える中国への気兼ねが強かったインドを3か国の枠組みに大きく取り込んだことは、それだけで意義深い。

 覇権主義的な一帯一路を唱える中国に対して、日米は自由で開かれたインド太平洋戦略を提唱している。安倍総理が最初にぶち上げたこの構想に、トランプ大統領が後追いで加わった。日本発の戦略を米国がフォローするという流れは、戦後日本外交において初めてではなかっただろうか。そして日米の不可欠なパートナーこそがインドと豪州というわけだ。

 昨年10月、自らの別荘(山梨県鳴沢村)に外国首脳として初めて招待するほどに、安倍総理はモディ首相との信頼関係を強めている。今年5月の総選挙でモディ首相が大勝を収めて国内基盤を安定させたことも、大胆な外交政策を可能としている。

 日米印はマラバールという海上での共同訓練も実施している。共通の懸念は中国の海洋進出だ。中国が急速な軍事化を進める南シナ海はもちろん、日本は尖閣の浮かぶ東シナ海、インドは自らの庭先というべきインド洋での中国の動きに強い懸念を抱いている。そして米国にとって制海権は自らが握る覇権の根幹であり、中国海軍の動向に神経を尖らせているというわけだ。

 軌道に乗り始めた日米印サミットと比べると、日米豪印の政府間対話はいまのところ高級事務レベルまでで、直近では本年5月にタイ・バンコクで開かれている。サミットまでにはまだ閣僚級というステップもあるし、一足飛びというわけにはいかないだろうが、今回の夕食会の席次はひょっとしたら大きな突破口になるかもしれない。そうなれば安倍総理の深慮遠謀もここに極まれりといえよう。宴の席が時として社交以上の意味を持つ。それが外交の世界というものだ。

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