川崎20人殺傷事件、立川志らくの「一人で死んでくれ」は正論か暴論か

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被害者意識

 ノンフィクションライターの窪田順生氏は、藤田氏の見解に異を唱える。

「犯罪に走る人間は社会から疎外され、周囲に必要とされてこなかった。だから、あなたは大切な人だと伝えることで犯罪を抑止できる。これが藤田さんたちの考える理想論です。ただ、この事件では伯父夫婦が犯人を心配して、何度も役所に相談を持ち掛けている。彼には家があって、犯行時も懐に10万円を入れていた。彼以上に孤独で困窮している人は幾らでもいます」

 数多くの殺人犯への取材経験を持つ窪田氏に言わせると、犯行に及ぶ人間の背中を押すのは愛情の不足などではなく、「被害者意識」なのだという。

「8人を殺傷した1999年の池袋通り魔事件の犯人は日々、被害者意識を募らせ、最後は一本のいたずら電話をきっかけにプチンと切れてしまった。深川通り魔殺人の川俣軍司が凶行に走ったのも、寿司屋の面接に落ちた直後です。どちらも自分を社会から孤立した被害者だと考え、復讐のために無関係の人々を襲っている。岩崎に対して過度に配慮すると、同じ境遇の人たちの被害者意識を増幅し、事件を誘発してしまう。たとえ厳しい物言いであってもダメなものはダメと訴えるべきなのです」

〈一人で死んでくれよ〉という言葉だけを取り出せば過激に映るかもしれない。が、これほどの事件が起きてしまった以上、そうした思いを抱く向きは決して少なくなかろう。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年6月13日号掲載

特集「立川志らく『一人で死んでくれ』炎上で置き去りにされる重大議論」より

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