ひきこもり100万人時代、「8050問題」はなぜ起きたのか

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価値観の押し付けで

 今回初めて明らかになった中高年調査の概要を紹介しておこう。

 調査では、「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが、家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」「趣味の用事のときだけ外出する」ことが6カ月以上続く場合をひきこもりと定義する。

 年齢の内訳は、60~64歳が26%、50代が36%、40代が38%である。そして全体の70%以上が男性で、期間は5年以上が過半数を占める。30年以上も6%いる。

 きっかけとなったのは、退職、人間関係、病気、職場に馴染めなかったこと、就職活動がうまくいかなかったことなど。そして、相談相手についての質問では、「誰にも相談しない」と答えた人が44・7%、次点の「友人・知人」の21・3%を大きく引き離す。

 なぜ現在の中高年層にこれほどひきこもりがいるのだろうか。

「いまの80代の親は、高度成長で経済が右肩上がりの時期を生きてきて、子どもを家庭に抱え込むことができたんです。私が取材した事例でも、豪邸でひきこもっているケースも稀ではない」

 と先の黒川氏は振り返るのだ。

 また、ひきこもりの支援をしているNPO法人「遊悠楽舎」代表理事の明石紀久男氏はこう指摘する。

「80(70)代は敗戦後の大きな価値観の変更の中で経済優先の生活を強いられるも、それなりの成功を収めて来た。その価値観の延長上にある彼らは、子ども世代からの気持ちをわかって欲しい、という想いを受け止めることが出来ず、いがみ合うか、見ぬふりか、の関係になり、そのことがひきこもる状態を生んできたのではないかと思う」

 親世代の責任は免かれ得ないのである。

週刊新潮 2019年6月13日号掲載

特集「あなたの隣にいる 『中年ひきこもり』の正体」より

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