丸山議員「戦争発言」は政府にも責任あり 長年、北方領土問題を軽視してきたツケ

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「戦争するしかないんじゃないんですか」。5月11日、ビザなし交流で北方領土の国後島を訪問していた旧島民らの訪問団の一員だった丸山穂高衆院議員(35)が、大塚小彌太団長(90 国後島出身)に「戦争ありき」を執拗にふっかけた暴言問題が尾を引いている。

 野党が提出した辞職勧告決議案には自民・公明両党が難色を示したが、結局、与野党は「国会議員の資格がない」として一致して議員辞職を促す「糾弾決議案」を衆院へ提出した。

「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と大塚団長に質問し、反対した同団長に「戦争で取り戻すしかないんじゃないですか」などとしつこく吹っ掛けた丸山発言は、居合わせた記者団が録音していたものを「帰国」後に報じたもの。

「根室港に迎えにいったが戻る前に聞いて仰天した」という千島歯舞諸島居住者連盟の河田弘登志理事(85 歯舞諸島出身)は「戦争があったから我々は故郷を奪われている。さらに憲法で戦争を放棄したことに日本人がみんな気を配ってきたのに信じられない」と怒りを通り越して茫然とする。

「戦争暴言」のみならず、丸山氏は島の宿舎に帰ってからも卑猥な言動をして「性的サービスの店に行く」と騒ぐなどしていたという。まさに「日本国家の大恥」と言える。

「ホームステイ先のロシア人の家でウォッカを飲み過ぎて酔っていた」と弁明しているそうだが、酔っていたなど言い訳にならない。否、酔っていた時こそ本音も出る。発言の翌々日になって撤回したが、もはや意味はない。国会や演説、記者会見などでの発言を撤回するのとは違う。特定の高齢の当事者に対面して言い放ったのだ。大塚氏はじめ旧島民の誰もが「思ってもいなかったのに酔っていたから言ったんだ」とは思わないだろう。

 さすがに国会の「先生方」も党派を超えて丸山氏を糾弾しているようには見える。与野党一致で「糾弾決議案」を6月6日に衆院本会議で可決し、事実上議員辞職を求めているが丸山氏本人は拒否し、国会へ出した弁明書では「人民裁判だ」と反論している。河田氏は「開き直るような感じで余計に悪くなった」と今後の領土交渉への影響を案ずる。「戦争で取り返せ」はロシア側の言う「第2次大戦の結果のロシア領土」を肯定することになる。

「北方領土問題の原点」たる北海道根室市の議会(本田俊治議長)は議員辞職を求める抗議を決議し、代表が5月31日に上京、衆院の大島理森議長に抗議文を手渡した。さらに政府に対し「ビザなし交流に同行する国会議員の厳正な人選」を求めた。

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