「夫は発達障害なのかもしれない」とカサンドラ妻が気づいた瞬間

  • ブックマーク

Advertisement

指示語が通じていなかった

 第二子の妊娠中は第一子と同じようにつわりがきつくすぐに働けなくなった。気持ち悪くて座っていられないので、取材も打ち合わせもできないのだ。

 働けなくなったのでお金がない。財布を別にした後だったので検診費用や月々の携帯代、交際費や食費などに充てるため月々2万円くらいは家計から出して欲しいと交渉したが応じてもらえなかった。

 それどころか私が家計費を負担しなくなったことで、夫が家事をすることにストレスを感じるようになったのをひしひしと感じる。

 せっかく努力して築きあげた家庭内のパワーバランスは一瞬で崩れてしまった。それでも妊娠と出産、家庭内の役割分担について説明すればわかってもらえるのではないかと、ことあるごとに一生懸命話したのだが、話が長くなれば夫はイライラして怒り出す。

 そしてある日、

「お前の話は本当にわからないんだよ、あれとかこれとか言われても何の話してるのかわかんないんだよ、それでもライターかよ!」

 と怒鳴った。

 驚いた。

「『あれ』とか『これ』とか言われても、何のことを言われてるのかわからないの?」

 いきなり私が大事なことを確認するように聞いたからか、彼も自分にとって大事な話だと思ったからなのか、それまでの戦闘モードから一転して、神妙に頷いた。

「わからない」と。

 指示語が通じていなかった。だからこそ、前提条件や過去の経緯をいくつも確認しながら結論を導き出すような複雑な会話を彼は嫌った。

 わからないことを誤魔化すため(またはわからなくてパニックに陥り)、怒り出していたのだ。

 もしかして、とこのとき初めて思った。

 もしかして彼は私が想像もつかない問題を抱えているのかもしれない、と。

 それは一体、なんなのだろうか。

〈次回につづく〉

星之林丹(ほしの・りんたん)
1982年、東京都生まれ。結婚を機に制作会社を退職してフリーランスに。6年で離婚、2児の母。

2019年6月3日掲載

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。