父親とは形だけの和解、大塚家具「久美子社長」がまた大きな風呂敷を広げている

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赤字を予測した過去はない

 大塚家具の過去の業績予想と、実際の業績の推移を見てみよう。

 いずれも業績予想はその年の2月上旬に出されたものである。久美子社長が経営を握った初年の15年こそ、世間を騒がせた“お詫びセール”が好調で、売上高は予想を上回る数字を上げたが、16年以降は赤字が続いている。17年には72億円もの赤字を出したが、その年ですら3億6700万円の黒字を見込んでいた。業績予想で赤字を考えたことが一度もないのが大塚家具である。なのに今年、後期に売上が伸びていく根拠はどこにあるのだろうか。

「事業計画には、〈前年のセールの反動減からスタートするも2月に底打ち、3、4月は改善傾向。店舗売上は12か月換算で前年比88・5%を想定。営業赤字は3月から縮小、2019年後半は月次で黒字化を想定〉とあります。つまり、昨年9月下旬から11月下旬まで続けた、最大8割引の“在庫処分セール”の反動で落ち込んだが、それがなくなれば上向くという説明です。そもそも、セールはやらざるを得ないところまで追い込まれ、やむにやまれず行ったものですよ。それを今頃になって責任転嫁されても……。確かに今年1~3月の第1四半期は惨憺たるものでしたから、何らかの理由付けは必要だったのだと思います。今年に入ってからの月次概況の既存店の売り上げを見ると、1月は前年比79・2%、2月が78・7%、3月は84・1%。4月には86・7%と上向きつつありますが、昨年のセールの反動がそんなに続くとは思えません。そもそもセール時の売上は昨年10月が前年比114・3%、11月が110・0%でした。ここで比較対象になっている前年とは72億円の大赤字を出した17年の売上です。それと比較して1割程度しか売上が伸びなかったのに、その反動減で前年比70%台にまで落ちたと説明するにはかなり無理がある。深刻な客離れが起こっていると考えるのが普通でしょう。となれば、7月以降のV字回復はなかなか難しいでしょう」

 事業計画にはECビジネスに力を入れるともあるが、

「決算短信には〈3月にユーザビリティ向上を目的として当社ホームページのトップページを中心に大きくリニューアル〉したとありますが、翌4月のEC売上高は前年比100.0%なんです。何の効果もなかったということでしょうか。これでEC売上率が上がると言われても、にわかには信じられません」

 中国企業との提携で、中国市場の開拓や越境ECビジネスにも熱心だが、

「以前から指摘されていることですが、中国人が船便や航空便まで使って日本の家具を購入したいと思うのかが疑問です。そもそも大塚家具には自社製品がなく、オリジナルブランドもOEMです。それを海外で、どれだけ大塚家具ブランドとして打ち出すことができるのかは疑問ですね。中国の提携先が、大塚家具の取引先と直接取引したほうが安く仕入れることができるのですから」

 一方、人件費の抑制には力を入れていくそうだ。

「新卒採用を控え、人員の自然減を補うための採用も最小限にするそうです。社員は減り続けていますから、残った社員は大変でしょう。ボーナスはほとんど出ないと言われていますし、モチベーションも下がる一方でしょう」

 大塚家具はどうすべきなのか。

「ともかく自分に都合の良い説明ばかりするのはやめたほうがいい。久美子社長は何かというとマクロ経済から話したがります。景気回復がどうとか、個人消費がこうとかよりも、既存店を立ち直らせる以外にないと思います。ECビジネスや中国進出などといった新しいものは、不確実性が高いのですから。また、消費増税の駆け込み需要まで見込んでいますが、14年に増税した時も、駆け込み需要があり、3月の売上は前年比133・4%まで上がりました。しかし、その後は前年比80%台にまで落ち込む文字通りの反動減もありました。そうした駆け込み需要については記しても、反動減については説明がない。もっと現実を見るべきです。ひょっとすると、上期は予想よりもひどい赤字になる可能性もあります。そうなれば、株価も落ち込むでしょう。先日の増資を引き受けた米投資ファンド、イーストモア・グループも取得した株式の半分以上を売却しましたし、大口の機関投資家が減って、個人投資家の持つ株が多いんです。となれば、ちょっとした情報で株価は浮き沈みしやすくなります。来年4月にはどうなっているのか……」

週刊新潮WEB取材班

2019年6月1日掲載

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