コンビニでDJイベントにレコード販売… 自由すぎる“レコードコンビニ”って何?

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 セブンイレブンの長時間労働問題をきっかけに、コンビニ業界の仕入れノルマや違約金といった、闇の部分が明らかになった。食品ロス問題に関連した弁当の値引きの取り組みも伝えられる。だが、その一方で、画一的なルールに縛られず“自由”な経営をするコンビニがあることをご存じだろうか。東京都中央区にあるヤマザキショップ系列のコンビニ、通称“レコードコンビニ”もそのひとつだ。

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 東京都中央区某所、オフィス街の一角にその店はある(店名はオーナーたっての希望で割愛するが、ググると出てくる)こじんまりとした店構えで、品揃えを見る限りは一見、普通のコンビニと大差はない。だが、よくみれば中古のレコードが売られ、何よりイートインスペースの窓に、内田裕也やビートたけし、尾崎豊のレコードが……。店頭の休憩・喫煙スペースには丸テーブルが置かれ、なんだかコンビニらしからぬリラックスムードが漂っている。

 ――夜の帳が下りる頃、店の照明はコンビニ特有の蛍光色からダウンライトへと切り替わり、夜な夜な音楽好きの人たちが集まる“クラブ”へと様変わりする。そう、ここが“レコードコンビニ”。3月某日に同店で開催されたDJイベントでは、20平米ほどの小さなスペースに100人以上もの動員があったそうだ。店長に、このような店づくりに至った経緯を聞いた。

パン棚がDJブースに様変わり

 店長は、学生の頃からレコード集めが趣味だった。同店はもともと祖父が立ち上げた個人経営の酒屋さんで、1999年夏に店を継ぐ際、時代にあわせてコンビニに業態転換したという。

「コンビニに転換してからしばらくは有線放送を流してたんですけど、3カ月ぐらい経った頃にワンパターンなBGMに耐え切れなくなって、自分でアンプを持ってきてスピーカーにつなげ、好きなレコードをかけるようになりました。そしたら、お客さんも『あれ? なんかいい音するよね』って反応してくれて。それが始まりですね」(店長、以下同)

 店内のBGM は、昼はインターFMの1970~90年代の海外パンク・ロックバンド(ラモーンズやザ・クラッシュなど)の楽曲を流すことが多いが、基本的にジャンルで括ることはない。来日アーティストや、亡くなったアーティストの追悼のために楽曲を流すこともあるそうだ。店内に流れるサウンドをきっかけに客との会話が弾むようになり、2011年頃に設けたイートインスペースにレコードジャケットを飾るようになったという。

「イートインができたときに近所の音楽好きのお客さんたちが来てくれて、各々好きなレコードをかけたり、シンガーソングライターの人がライブをやったりと、ごく自然な流れでイベントをやるようになりました」

 やがて2014年末頃、初めて大々的なDJイベントを開催することになった。問題は、店内のどこでプレイするかということ。イートイン席に機材を置くことはできるが、これでは窓の外を向いたDJと客が背中合わせになってしまって盛り上がりに欠ける。そこで、店内中央にあるパンの陳列棚の上にターンテーブルを置いてみたところ、見事にぴったりとはまった。それ以来、パン棚で回すスタイルが定着しているのだとか。

「DJイベントを始めた頃は、道路に人が溢れて苦情が入ることもありました。いまは近隣のカフェを第2会場として使わせてもらっていて、そこにDJイベントの映像を生中継で流しています。カフェでは休憩しながら飲食できるし、盛り上がりたくなったらコンビニに移動もできるし、うまい具合にお客さんが回転するようになっていますね」

 先述したように、レコードコンビニでは、一昨年から7インチのシングル盤レコードも販売している。ただ、それ以上のサイズのLPを展開するにはスペースが足りないため、先述の店とは別の近隣のカフェの一角で販売させてもらっているという。複数の飲食店との合同イベントを行うなど、地域の商店との交流も盛んだ。

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