中古車販売のプロがぶっちゃけ! 軽自動車を中古で買うことはおススメしません

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コスパ最悪は160万円の中古車

 このように、実は新車で買ったほうが得だった、という例は意外に多く、軽だけではなく普通車においても、中古車を買うと逆に損してしまうケースもあるという。

 たとえば、セレナやステップワゴンなど人気のミニバンを購入する際に、(1)300万円の新車、(2)5年落ち/走行距離5万キロで160万円の中古車、(3)10年落ち/走行距離10万キロで80万円の中古車の3つの選択肢があるとする。

 このなかでどれか1つ選ぶとしたら――実はこの中で最も選んではいけないのは、(2)の160万円の中古車だという。

「5万キロで160万円の中古車と10万キロで80万円の中古車、どちらも5年乗って売るとしたら下取り価格は0円です。一方で、新車の場合は5年乗ったとしても、下取りで4割はつくので120万円戻ってきます。そうなると、実質180万で5年間車に乗れた計算になる。新車保証(保証期間内の無料修理など)もつくことを考えると、1番コスパが悪いのは160万円の中古車ということになります」

 さらに、最近は車の性能が全体的に上がっているため、「走行距離の長短に関してはさほど気にしなくてもいい」と野瀬さんは話す。

「昔はよく“車の走行距離は10万キロまでが限界”と言われていましたが、最近では技術の進歩によって車の寿命は伸びていて、普通車であれば20万キロ位までは走ることができます。もちろん距離が少ないに越した事はないのですが、極端な話、プロの私が『走行距離5万キロの車』と『走行距離15万キロの車』に乗っても明確な違いはわかりません」

 20年以上前の年式では、車の寿命は10万キロが普通だったが、ここ10年前後の年式の普通車であれば、そこまで走行距離にこだわる必要はないようだ。事故車や修復歴などの大きな差がなければ、走行距離が多少長くても、安い車のほうがコスパがいいといえるだろう。

中古車購入の際の賢い見分け方

 中途半端な走行距離や値段などの中古車を買うのが、最もコスパが悪いことは先に述べた通りである。それならば激安中古車を買っておけば損をしないと考えがちだが、そんな簡単な話でもない。中古車のなかにはとんでもない“粗悪品”が混ざっていることもあるという。では、車購入の際は車のどこに注目すべきなのだろうか。

「まずは基本ですが、外装や内装を見ること。意外にやらないのが車体の下回りのチェックです。下回りをのぞきこんでオイル類や水類の漏れが無いか、変色が無いか確認しましょう。錆びがひどいものはブレーキに支障が生じ、きしみがでてしまいます。可能であれば試乗までするのがベストですね」

 野瀬さんによれば、内外装の状態は前オーナーの愛着や丁寧に乗っていたかどうかがそのまま表れるポイントで、車の状態そのものに直結する。さらに事故歴・修復歴などこれまで車が歩んできた歴史についても、事前によく確認したほうがいいという。

「個人的な感覚では、出回っている中古車の10台に1台は事故車やメーター不正車が混ざっています。走行メーターは簡単に改ざんできてしまうため、捕まる業者が後を絶ちません。事故車に関しても、たとえば人をはねてボンネットに転がったとしても、車の骨格を修理するほどのものでなければ修復歴に記載されないため、無事故車という扱いになってしまいます」

 購入の際、メーター不正車や事故車かどうかを確認する方法は次の通りだ。

「まずは過去の定期点検整備記録簿や車検証をチェックしましょう。整備記録が残っていればそこに実施年月と走行距離が記載されています。あとは車の鑑定書を確認すること。鑑定書は第三者機関が発行しているものなので、極めて中立・公正な評価がわかります」

 鑑定書があれば、その評価によって修復歴のレベル等が素人でもすぐにわかるという。また基本的には、相場より極端に安い車に関しても疑ったほうがいいようだ。

「関東だけでも中古車屋はたくさんありますが、仕入れ先は同じオークション会場がほとんど。当然、仕入れ値も大きな差はありません。にもかかわらず、市場で極端に安く売られている車は、誰も競り落とさなかったような状態の悪い車の可能性が高い。買う側が気づかなければ、わざわざ営業マンは悪いところを言いませんからね」

 実際、野瀬さんが絶対に手を出さないような車を仕入れる業者は少なからずいるという。そして日本のどこかで悪徳営業マンによって何食わぬ顔で販売されているのだ。

 安物買いの銭失いどころか命にまで関わってくる車選び。安さに惑わされずに、お買い得な車を見分けられるよう心がけたい。

取材・文/藤野ゆり(清談社)

デイリー新潮編集部

2019年5月23日掲載

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