那須川に勝ったら1000万円 対戦が叶わなかったフリープロボクサーはどう観たか

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 5月18日、AbemaTVの名物企画である“○○○に勝ったら1000万円”が配信された。今回は、キックボクシング界の“神童”那須川天心(20)を相手に、ボクシングで勝利したら1000万円というモノ。

 そこへ名乗りを上げたのが、海外を拠点とするフリーランスの現役プロボクサー中村優也(29:元WBCアジアバンタム級王者)である。しかし、彼が挑戦者に選ばれることはなかった――。

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 那須川が対戦したのは、タイの元WBA世界スーパーフライ級王者テーパリット・ジョージム(30:世界王者時のリングネームはテーパリット・ゴーキャットジム)と、プロ経験はないものの同志社大ボクシング部出身で、現在は大阪でアマチュアボクシングジムを構える藤崎美樹選手(29)だった。

 試合は、ヘッドギアありで1名につき1ラウンド2分を3回、勝敗は判定なしのKOのみというルールで行われた。結果を言ってしまえば、那須川選手は両名にKOされることなく、無事1000万円を“死守”した。

 4月12日付で配信された「Abema『那須川に勝ったら1000万円』 名乗りを上げたフリープロボクサーが怒る理由」(デイリー新潮)で、自分が対戦相手に選ばれたら勝つ、と豪語していたのが中村選手だった。そこで、中継を見終えたところで感想を聞いた。

中村:那須川選手のボクシングレベルは高いと思いますよ。完璧なボクシングのスタイルとは言えませんが、身体能力はもちろん格闘技センス、空間を把握する能力が高い。相手のクセであるとか距離の取り方、攻めのパターンであるとか、見極めが早い。しかも、ラウンドを重ねるごとに、身体も温まってきたのでしょう、動きもどんどん良くなっていった。

 前回の取材でも、那須川の身体能力の高さについては認めていた。

中村:那須川選手は、最初の相手であるテーパリットとはやりにくそうに見えましたね。相性の問題だとは思いますが、彼のほうが前に出てきて、ラフな動きをしていましたからね。一方、藤崎さんは、本来のスタイルで戦うことができず残念でした。藤崎さんはもともと、ピョンピョンと足を使って距離を取って、当てにいくパンチをベースにした、昔のアマチュアのタッチ・ボクシング・スタイルなんです。でも今回、那須川選手に勝つにはKO、倒さなければならなくなった。それで比較的判定勝ちの多かった藤崎さんは戦い方を変えざるを得なくなったんです。巧い選手ですが、本来のスタイルでは倒すことはできない。倒すためにはパンチを強く打たなあかんから、距離も近く、足をベタッと着けていた。そうなると次の動きを取りずらくなるし、那須川選手からパンチを受ける危険も高まったわけです。

 もっとも、那須川選手は苛立ったのか、藤崎選手を投げるようなシーンもあった。かつて亀田大毅が、内藤大助(当時WBC世界フライ級王者)に対して行った投げ技を思い出した方も少なくなかったのではないか。

中村:そのあたりは藤崎選手は戸惑ったかもしれません。アアマチュアでは反則を取られますから、藤崎さんも対応できなかったように思います。SNSなどを見ると、“天心の態度、悪い”とか書き込んでありましたが、今回、那須川選手が行った押し込みや倒すといった程度なら、プロなら反則は取られません。海外ならよくあることですけど、やっぱり日本だと、肩で押し上げるなんてフェアとは言われません。格闘技界を代表する選手だからこそ、その辺は気をつけてもらいたかったですね。

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