那須川に勝ったら1000万円 対戦が叶わなかったフリープロボクサーはどう観たか

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なぜ選ばれなかったか

 ところで、中村選手は4月13日に行われたオーディション(面接&スパーリング)で、先のテーパリットとはスパーリングで相まみえた。

中村:今回の配信でも、僕がテーパリットにスパーリングで追い込まれるシーンが、たびたび流されていましたね。言い訳になってしまうけれど、確かにやられたなとは思いました。でも僕が押し込んだ場面もありました。聞いた話だと、僕らフリーランスのプロボクサーが企画に参加を表明したのは、Abemaにとってはアクシデントだったようで、急遽、テーパリットが呼ばれたみたいです。もともとテーパリットとは飲み友達でもあるので、スパーリングの会場にいきなり現れ、彼のほうから「ユウヤ! ユウヤ!」と近寄って来たときは驚きましたよ。「なんで、こんなところにいるの?」と聞くと、「仕事! 仕事!」と言ってました。まさか、自分の相手になるとは思いませんでしたが……。

 それはそうだろう。かつて世界スーパーフライ級王者として、亀田大毅や名城信男を撃破したテーパリットだが、引退して2年。上限52.163キロだった元チャンプは、69.5キロにまで“成長”していたからだ。

中村:計量で僕は58.5キロでしたから、実に11.5キロ差。プロなら10キロの差があれば、重いほうは左手1本で相手を止められるほどと言われています。でも、2年前に引退しとるし、デブやし……3分1ラウンドだけだから、打ち合いにいってしまった。他のスパーは同程度のウエート同志でやっていたんですけどね。

 中村選手はわずか3分のスパーリングで落選する。いうまでもないが、スパーリングは勝敗を決めるものではない。ならば、動きの良い両者を対戦候補者として選ぶ手もあったはずだ。

 そもそもこのスパーリングで、ボクサーグループと異種格闘技グループ、それぞれ4名に絞られてトーナメント戦が行われた。那須川選手はボクサーと異種格闘技の選手と対戦するはずだったのだ。だが、異種格闘技グループの勝者が怪我で出場を辞退すると、なぜか残った5名(1名がさらに辞退)の人気投票を開催。もちろん1位は元世界チャンプのテーパリットだ。トーナメントでは藤崎選手に敗れたテーパリットが敗者復活し、結果的にボクサー2名が那須川選手と対戦することになった。お粗末な選考というしかあるまい。

中村:そこは僕が決めることではありませんからね。でも結局、運営サイドからは、スパーで「落ちた」とも「受かった」とも何の連絡もありませんでした。書類選考にはちゃんと対応してくれたんだから、落ちた理由くらいは知りたかったですけど。結果的に那須川選手はテーパリットに倒されなかったわけですが、それでもうええんちゃいますか。彼は日本の宝ですよ。なんであんな働かされなければあかんのか。僕は若いときから、海外で無茶な試合もしてきました。もうすぐ30歳になりますが、すでに体にはガタが来ています。那須川選手をそんな扱いでいいのでしょうか。あまりにも雑すぎますよ。

 AbemaTVは、今度は那須川選手と亀田興毅を6月22日に対戦させると試合直後に発表した。2人とも“勝ったら1000万円”を経験済みだ。

中村:次の試合までスパンも短いから、那須川選手にとってはボクシングの勘も忘れずに済む。有利かもしれませんけど、現役のキックボクサーなのに可哀想になってきます。

 ところで、亀田興毅は本当に強いのか。

中村:うーん、3男の亀田和毅選手は強いですけどね。興毅は賢いですからね、サウスポー同士ということもあり、那須川選手を苦しめることはできるかもしれませんけど……。

 中村選手は那須川選手との対戦を望まないのか。

中村:アジアバンタム級のベルトがなくなったので、いまは口を挟める立場じゃない。でもね、今回、嫌われ役を買って出たことで、自分、知名度が上がったんですよ。フリーでボクサーをやりたいという人たちから相談を受けたりしています。ですから、今後はもっとフリーのボクサーのために動きたいと思っています。もちろん、もう少し僕も現役を続けます。まずはタイトルを取らないと。フリーのボクサーを集めて6月30日に大阪で試合を組みます。タイトルマッチはボクシング連盟では1日3試合しか組めないことになっていますけど、僕や若手のいい選手などのタイトルマッチを4試合組むつもりです。それほど大きなタイトルではありませんけどね。今回いい意味で、プロデュース、売り方、見せ方を勉強させてもらいました。この経験はプラスにしないとね。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月20日掲載

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