安倍首相が画策する日朝首脳会談で、拉致問題解決のために絶対に要求すべきこと

国際 韓国・北朝鮮

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ストックホルム合意の教訓を活かせ

 北朝鮮との交渉では、首脳会談の前に行う実務レベルの協議の段階で、時間をかけて外堀を着実に埋め、首脳会談へ向けて北朝鮮側の矛盾点を全て排除しておくべきだ。2002年の日朝首脳会談で調印された日朝平壌宣言を作り上げるために、日朝両国は実務レベルの協議を1年間で25回行っている。日本人拉致問題を進展させるためには、これ以上の協議や駆け引きが必要になるかもしれない。

 3度目の日朝首脳会談が実現したとしても、金正恩委員長が本気で問題の解決を決意しないかぎり、日本人拉致問題は解決しない。2002年に小泉純一郎首相が訪朝した際、金正日(キム・ジョンイル)総書記は日本人拉致をあっさりと認めて謝罪したが、金正恩委員長に金正日総書記と同じように日本人拉致を認めさせることは簡単なことではない。

 日本はストックホルム合意での教訓は活かさねばならないが、果たして金正恩委員長に決意させるだけの交渉カードを提示できるのだろうか。ただ単に首脳同士が会っただけで問題解決へと進展するとは思えない。

 安倍首相が日本人拉致問題解決に向けてどのような戦略を描いているのか、安倍首相の発言からは全く推測できないが、日朝の外務省が水面下で接触していることを願いたい。今夏の参議院選挙を意識するあまり、首脳会談開催のために北朝鮮に譲歩することは避けなければならない。北朝鮮は日本の政治日程を意識して攻勢を仕掛けてくる可能性があり、その術中にはまることは日本の国益に反することになるからだ。

宮田敦司/北朝鮮・中国問題研究家

週刊新潮WEB取材班編集

2019年5月20日掲載

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