オスがメス化!? フクロムシに奴隷にされたカニの皮肉な生涯【えげつない寄生生物】

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 ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる一見小さな彼らが、自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄し、時には死に至らしめる様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。第6回は「カニをメス化するフクロムシ」です。

 今回、親友のカニをオスからメスのようにさせ、奇妙な卵を抱かせた寄生者は「フクロムシ」です。フクロムシ類は、海に棲み、カニ、エビ、シャコ、ヤドカリなどの節足動物に寄生します。私たちが目にすることができるフクロムシは磯によくいるイソガニ、イワガニ、ヒライソガニに寄生するウンモンフクロムシという種類です。

 フクロムシは昆虫やカニと同じ節足動物門の生物です。節足動物というのは体節や肢が特徴的ですが、それらがフクロムシは退化しています。そのため、大人になっても節足動物とは思えない外見をもっています。

 ウンモンフクロムシは、イラストでもわかるように、カニの腹部にあるカニの卵のように見えます。このカニの卵のように見える部分はフクロムシの体の一部です。この部分はフクロムシの生殖器部分で卵巣と卵がたっぷり詰まっています。では、フクロムシの本体部分はどこにあるのでしょうか。フクロムシの本体部分は、カニの体内にいます。まるで植物の根のように、カニの体内にフクロムシの組織が張り巡らされています。そして、この根のような部分で、カニの体中から栄養を奪っています。こうして、フクロムシは宿主の体内から栄養を奪い、自分の卵を抱かせて生きています。

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