ペイペイ、LINEペイ、楽天ペイを週刊新潮記者が使ってみて分かったデメリットの数々

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キャッシュレス決済で支出増

 煩雑な手続きに耐え忍んだ報いが、イジメにも近いほど酷な仕打ちだというのである。しかも、経済ジャーナリストの荻原博子さんによれば、

「ペイペイは一度チャージしたお金を銀行口座に戻せず、LINEペイは手数料が216円かかります。また、放置すると、ペイペイは最後の利用から2年、LINEペイも5年でチャージしたお金が消滅します」

 一方、本誌編集部の男性記者は、再び20%還元キャンペーン中のペイペイを使って、「1カ月で6千円トクした」と息巻くが、

「キャンペーンも第2弾は、すでに知名度上昇に成功したあとだったので、買い物1回当たりの還元額の上限が千円と大したことない。それに、加入者を増やすためのこうした還元キャンペーンが今後も行われる保証はありません」

 と荻原さん。また、ファイナンシャルプランナーで生活マネー相談室代表の八ツ井慶子さんは、

「銀行の金利が0・001%の時代に、その何十倍ものポイントが還元されるのは、事業者側に“顧客を囲い込みたい”という狙いがあるから。結果、必要のないものまで買ってしまいがちなので、要注意です」

 と指摘して、続ける。

「キャッシュレス決済を利用すると支出が増えるとは以前から指摘され、私が相談を受けた方も多くが“気づかずに使っていた”“使った感覚がない”という声を寄せています。現金のほうが“減った”感覚をもちやすく、キャッシュレス化が進んだ国ほど、GDPに対する家計の負債金額の割合が高いといいます。アメリカの行動経済学者、ダン・アリエリー氏の著書『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』には、キャッシュレス化とモラル低下の関係まで述べられています」

 挙げられた著作には、次のように書かれている。

〈とくに懸念をもっているのが、社会のキャッシュレス化が進むにつれて、わたしたちの道徳的指針がますます損なわれるのではないかということだ。現金からたった一歩遠ざかるだけで、これほどごまかしが増えるなら、社会がますますキャッシュレス化したらどうなるか考えてほしい。道徳的観点から言うと、クレジットカード番号を盗むのは、人の財布から現金を盗むのに比べて、ずっと簡単なのだろうか? デジタルマネーは、もちろん利点も多いが、自分の行動の現実感をいくらか薄めてしまうのかもしれない〉

 日本でキャッシュレスが進まない理由の一つとして、治安のよさを挙げる声もあるが、キャッシュレス化が進むと、犯罪へのハードルも低くなり、こうした日本の美徳も失われかねないということだ。

週刊新潮 2019年4月25日号掲載

特集「『キャッシュレス』のバスには乗らない!」より

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