くら寿司でノロウイルス食中毒が発生 寿司カバー「鮮度くん」は役立たず?

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ノロウイルスの感染ルート

 くら寿司側の並々ならぬ熱意と、開発した「鮮度くん」の効果に対する自信が伝わってくる。だが、小田原東町店が提供した寿司などを原因とする食中毒が発生したのは事実だ。どうして今回「鮮度くん」は無力だったのだろうか?

 小田原保健福祉事務所に取材を申し込んだが、大前提として、小田原東町店が食中毒の防止に力を入れていたことは、調査でも明らかになっている。厨房は清潔で、細心の注意を払って寿司を提供していた。事務所は「食材の汚染や、お客さん同士の感染も、もちろん調査しました」と説明する。

「例えば、感染された方が皆さん牡蠣を食べていれば、牡蠣が原因になります。ところが小田原東町店の場合、感染された方々が口にされたものは、コハダやマグロのお寿司、茶碗蒸し、ラーメンと様々なものでした。このため特定の食材に原因があるという結論には至っておりません」

 更に食中毒に罹患した客にも、店側にも「トイレなどに吐瀉物が残っていなかったか」と質問したが、「見た」という回答はなかった。

「これで吐瀉物からの空気感染も否定されました。またノロウイルスに感染したお客さんが食事をした時間帯が同じだったり、場所が集中していたりすれば、お客さん同士の感染が疑われます。しかし実際は、時間帯も席もばらばらだったのです。原因は現在も調査中ですが、小田原東町店に勤務する従業員の方がノロウイルスに感染しても自覚症状がなかったのでしょう。これを『不顕性感染』と呼びますが、そのために勤務を継続。ノロウイルスが手指などを通じて寿司などを直接に汚染。それをお客さんが食べたことで感染した可能性が高いと考えています」(同・小田原保健福祉事務所)

 くら寿司では、握りは寿司ロボットが担当しており、ネタを載せる手作業は手袋の着用を義務づけている。公式サイトから《安心のこだわり6》をご紹介しよう。

《くら寿司自慢のシャリを握るのは、1時間に3,600貫という生産能力を誇る「寿司ロボット」たち。機械による作業ですので、衛生的で均一なシャリが出来上がります。ネタあわせは手袋を着用しての手作業。厨房内で商品に触れる作業は全て専用手袋の着用を義務づけていて、清潔・安全性に細心の注意を払っています》

 ここまで対策を講じているのだ。本当にノロウイルスがお寿司に付着したのだろうか?

「今回の調査では、従業員の皆さん全員の検便は行えませんでした。そのため、感染者を個人レベルで特定することはできておりません。ただ一般論として、例えば手洗いを徹底しないと、指などに残っているウイルスが手袋の表面にも付着。その結果、手袋のウイルスが寿司を感染させてしまうことはあり得ます」(同・小田原保健福祉事務所)

 週刊新潮WEB取材班は4月18日、くら寿司の代表番号と思われる番号で取材を申し込んだが、最終的には取材拒否だった。

 鮮度くんが、泣いている……。

週刊新潮WEB取材班

2019年4月24日掲載

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