韓国人男性が日本のAmazonに「★1つ」のレビューを投稿しまくる珍現象はなぜ起きたのか

国際 韓国・北朝鮮

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一体、結婚もしないで何をしているんですか

 成長して、成人した後でも韓国女性の困難は続く。家庭が男性優遇なら、職場は男性厚遇。就職活動でも男子学生が優先され、就職した職場では大きな仕事を任されず、結婚と出産を機に仕事を辞めざるを得ない。加えて言うなら、女性に対する結婚・出産の圧力も大変なものである。

 以前、韓国女性から聞いた話であるが、タクシーに乗るや否や運転手から既婚か未婚かを尋ねられ、未婚だと告げると「一体、結婚もしないで何をしているんですか」と言われたという。もし、「既婚だ」と答えたら、今度は「子供は何人か、息子か娘か」という質問が続くのは必定である。

 運転手のこうした質問は韓国人の伝統的な価値観を反映したもの。女性は適当な時期に結婚し、家庭に入って家事をこなし、子供(出来れば息子)を生んで十分な教育を受けさせ(学歴をつけさせ)、舅姑に仕えて最期を看取る。これが韓国人の、というか韓国人男性の思い描く理想の女性像であった。

 何とも息が詰まるような話であるが、こうした理想像や価値観は一種の社会規範として韓国社会全般にどっしりと根を下ろしており、それに異を唱えるのは容易なことではなかった。作品に描かれたキム・ジヨンの成長期の韓国社会はそうした社会であり、作品中に描かれた事象は、韓国人女性なら誰でも一度は経験したことのある事柄なのである。この作品が韓国で女性の絶大な支持を得た理由はそこにある。

 既存の書評では女性の絶大な支持や共感に加えて、男性の反発があったことが述べられているが、そうした反発を「根強い男性中心意識によるもの」として片づけ、それがいかなるものだったかについてはほとんど触れられていない。

 実は、韓国において、この作品に対する評価は様々であるため、これには、かなりの違和感を持った。支持や共感だけではなく、反発や批判についても触れなければ、この作品をめぐる韓国における論議や、韓国社会の現状は見えてこない。私は周囲の韓国人(主に男性)にこの作品に対する感想を聞いて回ったが、総じて否定的であった。

「進歩的な視覚で書かれた本ですから、偏った内容。女性に対する差別や抑圧など複合的な問題を単純に一般化し、男女の対立を深めた」

「過去の世代が受けた差別を、現在の世代に償わせようとしている。また過去・現在の社会で発生した刺激的な事件をすべてキム・ジヨン本人と関連づけたり、経験したように書いている」

「社会や他人に責任を転嫁してばかり」

「何でもかんでも他人のせい、社会のせい、両親のせい」

「マスコミによって『作られた』ベストセラー。マスコミと学校であれほど持ち上げれば、ベストセラーにならないほうがおかしい。正常ではない。作品性よりも作品が持つ意味のみが強調された印象」

「この頃は韓国では男のほうがもっとつらい。女性に対する抑圧? 今は60~70年代じゃない。笑わせるな」

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