アリがゾンビに!? 死ぬ場所・時刻まで操る恐ろしい寄生生物の正体とは 【えげつない寄生生物】

えげつない寄生生物2019年4月19日掲載

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 ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる一見小さな彼らが、自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄し、時には死に至らしめる様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。第4回は「アリをゾンビにするキノコ」です。

 今回、恐怖のどん底に落とされた主人公はブラジルの熱帯雨林などに住む「カーペンターアリ」です。群れを離れて、ふらふらと歩きだした仲間は、この時すでに「あるもの」に心も体も乗っ取られていました。その「あるもの」とは「キノコ」や「カビ」の1種です。鍋に入れたり、焼いたり、炒めたりするだけで簡単に美味しくいただけるあのキノコの仲間です。

 キノコは真菌と呼ばれる生物の1種です。この真菌には、キノコ・カビ・酵母などが含まれます。細菌よりも大きく、細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官をもっています。
 キノコは、木や土の中に菌糸を張ります。この表面に出ない菌糸の部分が、キノコの本体ですが、私たちはほとんど目にすることはありません。では、いわゆる「キノコ」として売られて私たちが食しているあの部分は何でしょうか。それは、「子実体」と呼ばれるものです。ゾンビアリの頭からニュルリと出てきたのは、実はこの「子実体」の部分です。このように、子実体としてのキノコを作り、そこから大量に次のキノコの種となる胞子を撒くのです。

 キノコとカビは分類的にはほとんど差がありません。唯一の違いは、胞子を作る「子実体」が、キノコの場合は肉眼で見える程に大きくなり、カビは大きくならないという点です。「キノコ」という名称も、菌類のうちでも比較的子実体が大きいもの、あるいはその子実体じたいにつけられた俗称なのです。

 今回、アリの頭から生えてきた子実体は肉眼でも見えますが、食べ応えがあるほど大きくはないので、ここではアリから生えてきたものは「カビ」と呼ぶことにします。

 では、この先は頭からカビが生えたアリの体内で何が起こっていたかを見ていきましょう。

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