習志野の「サイン盗み」はあったのか――エースに揺さぶり当然? 両監督の主張

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熾烈な駆け引き

 そこで、抗議を受けた習志野の小林監督に、サイン盗み疑惑について尋ねると、

「そうしたことはない、という原則でやってきました。今大会でも、子ども達には“普段通りにやりなさい”と言っています」

『甲子園への遺言』の著者で、ノンフィクション作家の門田隆将氏はこう語る。

「今回、習志野がサイン盗みをしたとは思えません。そもそも、打者一巡しかしていない段階で二塁走者がコースだけでなく球種まで読み切って、それを打者に伝えることなどできるでしょうか。そんな高度なことが可能なら、もっと有効な戦術は、ほかにいくらでもありますよ」

 その一方で、高野連が禁止に踏み切ってからも、サイン盗みがたびたび取り沙汰されてきたのは事実だ。

「たとえば、02年のセンバツでは、宇都宮工と対戦した福岡工大城東が、ネット裏から相手投手の攻略法をベンチにメモで伝達していたことが発覚しました。しかし、ことなかれ主義の高野連はこれをうやむやにして、同校はそのまま次戦に出場しています」(同)

 16年のセンバツでも花咲徳栄と戦った秀岳館がサイン盗みを疑われ、審判から注意を受けている。こうした事情を踏まえた上で、門田氏が断じるには、

「例えばスクイズのサインをどう見破るのか。高校野球とは、人生でわずか2年半しか許されていない期間限定の究極の勝負の世界です。だからこそ、甲子園では、さまざまな熾烈な駆け引きがある。まして星稜の奥川投手は将来“奥川世代”という言葉が生まれてもおかしくないほどの逸材で、メジャーでの活躍も期待されている。そんな投手に相手があらゆる揺さぶりをかけてくるのは当然。今回のように、それにまんまと乗って自滅してしまうのはいかがなものでしょうか」

 先の安倍氏も、この「疑惑」に白黒つけるのは極めて困難だと語る。

「サイン盗みがなくならないのは証明ができないから。今回の件も、最終的には“自白”がなければ断定はできないでしょう」

週刊新潮 2019年4月11日号掲載

特集「高校野球は汗と涙の物語か 『星稜vs.習志野』サイン盗みに蓋をする粉飾『高野連』」より

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