服で悩む人へ――私は6パターンしか持ってません(中川淳一郎)

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 3月、洋服に悩む季節がやってきました。今年の流行りの色は紫! 春色コーデでモテモテナイスミドルの人生を謳歌しよう! みたいな話では全然ありません。アパレル業界の方からすれば「なんだこの野郎!」と言いたくなる話ではありますが、私、年間を通じて着る服の組み合わせが6種類しかないんですよ。

 そして、この組み合わせの根拠になるのが現在居住している東京の「気温」です。何しろ、寒かったりポカポカしたり、まるで定まらない3月と10月の気温に悩んでいるということです。以下、6種類です。

【暑い時(6月~9月)】Tシャツ+短パン

【少し暑い時(5月、10月)】Tシャツ+長袖白シャツ+短パン

【涼しい時(3月、4月、10月)】長袖白シャツ+薄手の黒ジャケット+黒ジーンズ

【少し寒い時(3月、11月)】長袖白シャツ+コーデュロイの厚手の黒ジャケット+黒ジーンズ

【寒い時(12月~3月)】長袖白シャツ+薄手の黒ジャケット+ロングコート+黒ジーンズ

【かなり寒い時(適宜)】長袖白シャツ+コーデュロイの厚手の黒ジャケット+ロングコート+黒ジーンズ

 こんな感じですから、私がインタビューなどに登場する時は、ある時期に関していえば常に同じ格好をしています。

「今日は何を着ていいか悩む!」とか「TPOに合わせた格好をしたいものだ」みたいな話は時々聞きますが、洋服でいちいち悩むのは無駄なことだと考えています。何しろZOZOの前澤友作社長がツイッターでいみじくも述べていたように、洋服など原価が2~3割で、後は会社の格を示す「ブランド代」などに使われているわけですよね。

 Tシャツ長者やら世界的デザイナーが巨額の富を得たりする背後には、「ファッションに悩む人々」の不安を賢く利用した面があるのでしょう。だったらもうファッション如きで悩むのはアホだ、とばかりに、私は18年ほど前から上記6バージョンで生きることを決めています。

 Tシャツなど、30年前、高校生の時に買ったものもありますし、ジャケットは10年ぐらい着ている。黒ジーンズは3年に1回取り換える、タイで買った300円のものです。コートは20年ぐらい持つであろう値の張るものを買いました。

 先日嬉しかったのが、飲みの席の写真をSNSに公開したところ「中川さんのYシャツ、相当高いものと思われる」と書かれたことです。いやいや、ユニクロにしては高級な2900円ぐらいの形態安定シャツです。昨今のファストファッションは、高く見えるんです。

 朝、家を出る時に服装に悩んで余計な時間を使うのであれば、天気予報を見てその日の最高気温と最低気温から決めるのが手っ取り早い。別にどんな服を着ていようが、他人は気にしていません。洋服に悩むぐらいであれば、いっそのこと以下のように割り切ってはいかがでしょうか。洋服代を年間1万円ぐらいにし、新規購入は破れた時のみ! 服に悩む時間とかけるカネを減らせば人生は相当ラクになりますよ。

 ただし、「ファッションにこだわるのは楽しいからだ」と言う方はガンガン、おカネ使ってください。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2019年3月28日号掲載

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