柴犬の飼い主のおじさんたちが公園でダベるだけのドラマ「柴公園」が愛おしい

芸能週刊新潮 2019年3月7日号掲載

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 おじさんドラマ第3弾。もう絵ヅラだけで心穏やかになれる。しかも柴犬つき。なぜ今、おじさんドラマに惹かれるかというと、たぶん、現実では大欲非道のおじさんたちが目に余るから。息を吐くように嘘をつき、金持ちと目先の利益しか考えない輩が国を滅ぼしかけているから。そんなことはさておき、いや、さておいていいのか。もう現実逃避。なんのこっちゃない、柴犬の飼い主であるおじさんたちが公園でダベるだけのドラマ「柴公園」が愛おしい。

 キー局そっちのけ。ローカル局の底力を見せつけるのが、このAMGエンタテインメント企画の動物シリーズ。過去に「ねこタクシー」(カンニング竹山主演)、「幼獣マメシバ」「マメシバ一郎」(佐藤二朗主演)、「猫侍」(北村一輝主演)、「猫忍」(大野拓朗主演)などがあり、犬好き猫好きおじさん好きには垂涎の作品群である。

 私は基本猫派だが、猫に演技をさせるのがあまり好きではない。そもそもキャツらは不服従と奔放が自然な姿だから。猫ドラマよりも柴犬ドラマに心奪われる理由はそこにある。

 で、柴公園。主演は、ちんぴらか詐欺師か人殺しか、逆に殺される役が多い渋川清彦。映画「下衆の愛」ではアジアを代表するクズっぷりだったし、昨年の「モンテ・クリスト伯」(フジ)で見せた下衆っぷりと死に様は国内屈指。軽くて薄い微笑みと虚ろな眼差しは、時に絶大なる頼りなさを醸し出し、時に心がない人間の空恐ろしさを感じさせる。

 そんなダークサイド露出過多の渋清が、あろうことか目尻を下げて柴犬を溺愛しとる。それだけでも希少かつ珍味。独身40歳、少し斜に構えたというか拗(す)ねた性格だが、基本は人好きのする類(たぐい)を飄々と演じている。

 同じ公園でほぼ毎日会う柴犬の飼い主仲間には、大西信満とドロンズ石本。大西はちょっとおしゃれさんで、柴犬にも服を着せる制服組(渋清は犬に服を着せない裸族派)。理論派だけど小心者、犬への気遣いが神経質なフシも。で、石本は朗らかで、誰彼構わず話しかけちゃうオバチャン力の持ち主。こういう飼い主、いいなあと思わせる。

 おじさん3人と柴犬3匹の絵ヅラは平和そのもの。本名も職業も知らないおじさん同士が犬の名前にパパをつけて呼び合い、柴犬を通じて他愛もない会話を弾ませる。大きな山も谷も金もない、平穏で清貧なドラマだが、虚言と虚飾で淀んだ現実を忘れさせてくれる。

 もちろん、些細な勘違いや思い込みからちょっとした諍(いさか)いに発展しそうになるものの、大概は穏やかに収束する。あるいは「深掘りせずに触れないでおく」という大人対応で済ませる。

 後半に何か起こりそうな気配もあるし、桜井ユキ演じる元・引きこもり女性がどう関わるのかも気になる。

 時間の巻き戻し、ややあざとい会話の展開に新奇性はないが、うっかり頷いている自分もいる。名言風味の人生訓に一瞬唸るが、翌日にはすっかり忘れるという軽やかさがいい。薄味だが、体の芯から温まるだし汁のような印象。流れる時間がここだけ違うんだよね。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。