1万3千人を騙した「KING事件」 460億円を集めた手口をプロが分析

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 約1万3千人から460億円余りとは、集めたものである。「KING」を自称し、自身の成功物語を語って大金持ちだと吹聴するばかりか、ライブで歌を歌い、おまけに神主まで務めていた銅子(どうこ)正人(41)。投資コンサルティング会社を謳ったテキシアジャパンホールディングス会長で、「元本保証」「月3%の配当」という破格の好条件を売りに、出資を募っていた。

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 とはいえ、テレビ等に流れた映像に、「なぜこんな男に騙されるのか」と思った方も多いことだろう。「自分は騙されない」と。しかしである。虎の子をむしり取られた被害者の多くも、やはり「自分だけは」と思っていたようなのだ。

 それなのに、なぜ騙されたのか。まずは被害者の声に耳を傾けてほしい。

「私が田中のところに100万円を預けたのは、2016年7月でした」

 と語るのは、北陸地方に住む40代の男性。銅子は主に偽名の「田中」で活動していたのだ。

「その1年ほど前から知人に勧められて“日本元気プロジェクト”という田中のライブに数回通ったのですが、田中は舞台上で障害者をもてなすんです。田中と出逢ってがんが治ったと話す人もいました。障害者を見世物にして他人の金を巻き上げる人がいるなんて思えず、信用してお金を預けてしまいました」

 で、預ける際に、

「借用書を渡されました。資金をどう運用するかの説明はなく、代わりに田中は“資産数千億円の大金持ちで、自分の資産運用だけで配当を出せるから心配するな”と。“困っている人がいたら連れておいで”とも言われ、その後1年ほど月3%の配当が支払われたので、信用したのです。配当は“元気玉”と呼ばれていました。田中の会には久間章生元防衛相や東祥三元衆院議員ら政治家も登場したので余計に信用し、妻と母にも100万円ずつ預けさせてしまいました」

 ところが、17年夏から配当が滞るようになり、

「そのころ、出資金を仮想通貨に交換しないかと言われました。私はすでに、内部の方から“危ない”という話を聞いていて、コインに替えてしまったら借用書がなくなってしまうと思い、替えませんでしたが」

 銅子を知る、さる人物が補って話す。

「彼らは途中から仮想通貨事業に切り替えました。要するに、元本保証、高利息を謳って集めたお金を、運用せずに配当に充ててなんとかしのいでいたのですが、資金の自転車操業が上手くいかなくなった。お金がないので、仮想通貨をでっち上げたのです」

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