1万3千人を騙した「KING事件」 460億円を集めた手口をプロが分析

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40代後半女性、60代の被害者のケース

 続いて、北海道在住の40代後半の女性が話す。

「息子がお世話になった幼稚園の先生に誘われ、テキシアのイベントに出席したのは14年12月。そのときに受けたのは、田中がいかに素晴らしい人間で、いかに金持ちかという説明です。シンガポールの豪邸やヨット、奥さんと2人の子供との仲睦まじい画像も見せられました。また、田中には十分な資産があるので元本は保証されると。ランチの費用もタダで、“お友だちも誘っておいで”と声をかけられました」

 加えて、成功譚や美談を聞かされたという。

「“見えなかった目が見えるようになった”“聴こえなかった耳が聴こえるようになった”“30歳で白血病になったが、1本1千万円の注射を打って治った”、だから“自分は神に生かされている”と、田中は言っていました。震災の被災者にポンと寄付したという話も印象的で」

 さて、この人が借用書に署名してお金を渡したのは、

「14年末に200万円。翌年5月に100万円、16年3月、さらに50万円出資しました。このとき100万円出資すれば温泉旅行にタダで行けると言われましたが、50万円でも1万円程度の自己負担で旅行に行けました。配当は当初は月2%で、15年夏以降の入会者は3%に。ただ、1年の満期をすぎても継続投資すれば3%の利息を受け取れるといわれ、私も継続したんです。ところが17年夏から配当の支払いが滞り、田中が神主を務めているという神社が本当にあるのか神社庁に聞いたら、“鳥居のようなものはあるけど普通の民家だ”と言われて」

 しかし、時すでに遅し、であった。ちなみに、ここに紹介した被害者は40代だが、先の男性によれば、

「被害者の大半は60代以上の女性。年金暮らしの高齢者が、儲かると思ってお金を預けたのです」

 60代の事例はテキシアの被害者の代理人、玉井邦芳弁護士が語ってくれる。

「友人の誘いで食事会に行ったのがきっかけで、豪勢にご馳走してもらい、ライブでお金をばら撒くのを見せられ、信じてしまったそうです。投資額は16年以降、計1200万円。取り巻きが銅子氏について“彼は海外に1千億円の資産がある”と話していたりして、そんなにすごい人なら、と思ったそうです。紹介者に現金を渡すと、テキシアから借用書が送られてきたのですが、口座振り込みだと証拠が残るので、お金の流れを捕捉されないための対策だったのでしょう」

 国民生活センターによれば、この手のファンド型投資被害の相談件数は、

「昨年度の6831件に対し、今年度は年度途中ですでに8865件です。うちテキシアに関する相談は297件になります」

 テキシアの被害は氷山の一角、といえるほど、同種の詐欺が多いわけだ。

「元本保証や高配当が、この手の投資詐欺の共通点です。ほかの人を誘うとお金がもらえる、というマルチ的な要素が含まれている点も、最近の投資詐欺事件に共通しています」(同)

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