1万3千人を騙した「KING事件」 460億円を集めた手口をプロが分析

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プロが分析するその手口

「“友人からの紹介”を重視し、“みんなで”というのを強調していたのが、巧妙だと思いました」

 と、田中こと銅子らの手口について述べるのは、一般社団法人、日本防犯学校学長の梅本正行氏である。

「信頼のおける人から紹介され、“私も配当をもらっているから大丈夫”と励まされれば、その気になってしまう。特に不安を抱えている高齢者は“みんなで幸せになりましょう”と言われながら、食事したり旅行をしたりするうちに仲間ができた気になり、“みんながKINGを支持しているのだから大丈夫だろう”と錯覚してしまうのです」

 梅本氏は「夢の世界」というキーワードを挙げた。

「月3%の金利は年間だと36%。そんなおいしい話はあり得ませんが、あり得ると思わせてしまうのが銅子氏の上手さ。彼が歌って踊るのも、難病を克服し、莫大な資産があると語るのも、神主だというのも、他人といかに違うかというアピールです。周囲が“キャー”と歓声を上げる非日常的な空間を作り、被害者を“夢の世界”に惹き込む」

 それに、月3%がいかにナンセンスでも、

「1人が100万円出資したとして、配当は33カ月で99万円なので、2年9カ月は支払うことができる。支払いが続くうちに、ますます信じてしまうのです」

 と、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏。怪しい手口にも警戒心が働かなくなるというわけだ。梅本氏が続ける。

「投資や出資の際に借用書をもらうなど、あり得ません。借用書を使うという手口も悪知恵が働いた仕組みだと思いますが、“みんなで夢を叶えるために”という建前があって、心配ないと思わされてしまった」

 詐欺や悪質商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏は、“ハロー効果”という言葉で説明する。

「日本語で後光効果。銅子容疑者が神主でもあるというのが非常に大きい。社会的評価が高い職業に就いていると、その人の人格まで素晴らしいと思い込んでしまいがちなのです。神主がウソをつくわけがないと。“助け合いの精神で”というのも、孤独感を抱えている人の心をつかみますね」

 さらには催眠商法に似ていると、多田氏は言う。

「セミナーに誘ってその場を楽しく盛り上げ、冷静な判断がつかなくして高額なマッサージ機などを買わせるのが催眠商法。銅子容疑者もセミナーやコンサートで、歌やトークで場を盛り上げて心をつかんだ。参加者はアイドルの追っかけをしているような心理になるのでしょう」

週刊新潮 2019年2月28日号掲載

特集「『KING事件』の被害額は460億円! 世に尽きない『悪徳商法』の種! あなたの虎の子を狙う最新『詐欺手口』」より

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