アイス屋さんになった「松本薫」さん、野獣は封印 「相手はお客様なので」

スポーツ 週刊新潮 2019年2月21日号掲載

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 野獣とアイスクリーム。突拍子のない組み合わせに驚かされたが、実は引退した松本薫さん(31)のなかで、野獣はすでに死んで、笑顔に入れ替わっていたという。それもまた突拍子のない話で――。

「うちの柔道館に子連れできて、引退するという報告を受け、“気持ちがなくなったらお前の柔道は終わりだよ”と声をかけました」

 帝京大学柔道部時代の恩師、帝京豊郷台柔道館の稲田明館長は昨年11月、全日本体重別選手権の1回戦で敗れた直後の松本選手のことをこう話し、彼女の“野獣性”について回想する。

「攻撃、攻撃の柔道で、まさに野獣。闘争心が目に表れていました。金沢にスカウトに行ったとき、高校時代の松本は目立った選手ではなかったものの、意欲は野獣。“先生、なんとか入れてください”と直訴されました。その後、勝つことだけを考えて余裕がない彼女は、試合に出られずに落ち込みますが、みな楽しんで柔道をしていると気づいてからは、試合では闘争心をむき出しにしても、それ以外では周囲を和ませるようになりました」

 当時から状況次第で脱野獣化していたそうだ。また、所属していたベネシード柔道部の津澤寿志監督は、

「松本はロンドン五輪を区切りにしていて、“五輪が終わったらパティシエになりたい”と言っていた」

 と打ち明け、続ける。

「でも、金メダルはとっても一本勝ちできず、リオを目指したんです。“東京もやります”と意気込んでいましたが、子育てとの両立は難しかった。彼女の練習は週5日、16時から19時半までで、以前はその後も練習しましたが、それができなくなりました。でも子供を疎かにできる人じゃなかったので。攻撃して相手のスタミナを奪うスタイルだから、人一倍体力をつける必要があるのに、それに時間が割けなかったんです」

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